2017年04月13日

美術展紀行〜「大エルミタージュ美術館展〜オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち〜」〜

「大エルミタージュ美術館展」
2017.3.18〜6月18日/森アーツセンターギャラリー

先月行った「ティツィーアーノとヴェネツィア派展」のブログもアップできていないのに、
昨日行ったエルミタージュ展の感想をアップ。

エルミタージュ美術館は、世界各国の珠玉の名画が結集した絵画の殿堂。いつか行ってみたいけれど、当分その機会はないので、せっかく来日したので行ってきました。
エカテリーナ2世の華やかなりし時代にできた絢爛豪華なエルミタージュ美術館、作品につけられた額縁もまた豪華かもしれないという期待もありました。

今回の音声ガイドは、又吉直樹さんバージョンとロシアの人気キャラクター、チェブラーシカ・バージョンがあり、非常に興味を惹かれ心揺らいだのですが、一般ピーポーには決して高くない550円という金額は、私にとってはお弁当一個買える値段。一食まかなえる金額を支出することはできず、泣く泣く音声ガイドは諦めました。(チケット買うのがやっと)「武士は食わねど音声ガイド」という方は、是非、お借りください。

〇「戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像」
ウィギリウス・エリクセン
Hermitage3.jpg
会場に足を踏み入れると、ドーンとエカテリーナ2世がお出迎え。
33歳の戴冠式のときの姿だそうですが、非常に貫録ある姿。ロシアの肝っ玉かあさんという感じ。この日はちょうど、この作品のみ、フラッシュをたかなければ、写真撮影OKという、これまた太っ腹なサービスがありました!バンザイ!スパシーバ!
ついでに、エカテリーナ2世を真ん中に、家人と私の3ショット記念写真も撮ってきました。

〇「エウロパの略奪」
グイド・レーニの工房
Hermitage9.jpg
若く美しい女性が、花で飾られた白い牛に乗っている姿が描かれています。
エウロパは、ヨーロッパの語源となったフェニキア王の娘。
エウロパを気に入ったゼウスは白い牛に姿を変え、エウロパに近づき、大人しい牛に安心したエウロパがその背中に乗ると、ゼウス牛は猛然と海を渡り、クレタ島へ辿りつくとエウロパを見事手中におさめるというギリシャ神話を描いています。
ゼウスの正体に気づかないエウロパは、恐れる様子もありません。
若い女性の、レーニらしい滑らか肌の表現が美しかった。
ゼウスの策略のシーンですが、全体的に明るい色調で、花を飾った牛も愛らしく、牛とたわむれる女性の絵、といった楽しい印象しか湧きません。

〇「聖家族」
ポンペオ・ジローラモ・バトーニ
Hermitage4.jpg
美術展のチラシで見たときから、見たかった一枚。
バトーニという画家は知らなかったので、またお気に入りの画家を新たに発見。
美術展で、有名な絵画を見ること以上に、「日本ではあまり知られていないけれど、私だけのお気に入り」を見つけることが私にとっての美術鑑賞の醍醐味。
若いマリアがとても美しい。マリアのガウンの青色が鮮やかで目を惹かれます。
聖家族を描いているけれども、それは普通の家の室内のようで、椅子や赤い織物のクロスがかかったテーブルがあり、その上には薔薇と白百合のいかった花瓶が置かれています。
薔薇も白百合も、聖母のアトリビュート。

〇「幼子イエスと洗礼者ヨハネ」
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
Hermitage7.jpg
幼子として描かれたイエスとヨハネが愛くるしい。羊のモフモフ感もいい感じ。
ムリーリョの描く宗教画は、恐ろしいもの、残虐なものは何もなく、いつも平和で、見ていて心安らぎます。

〇「受胎告知」
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
受胎告知の作品は数多あれど、大天使ガブリエルがこんなにも愛らしい作品は珍しい。
神のお告げを告げる天使ですから、人間離れしていたり、威厳があったりすることが多いのに、ムリーリョが描くと、親しみやすい少年のような感じ。これならマリアも怖がらずにすみますね。精霊の鳩の上に飛ぶ天使たちも、プクプクと愛らしい童子たち。

〇「春」
ニコラ・ランクレ
森の中で、美しい服を纏った男女が戯れる、ヴァトーのようなフェート・ギャラント(雅宴画)。暖かな陽気の中で、恋も芽生えるのでしょう。
人生の春ですな〜

〇「スペイン風の読書」
シャルル・アンドレ・ヴァン・ロー
Hermitage14.jpg
ヴァン・ローの作品はあまり見たことがないので、貴重でした。
こちらもフェート・ギャラントの一つ。
シンデレラに出てきそうなヒラヒラ、フリフリのロマンチックなお姫様ドレスの女性たちと、モーツァルト風の衣裳の男性が森の中で読書。
平和ですな〜

〇「ヴィーナスの化粧」
フランソワ・ブーシェに基づくコピー

コピーなら、下さい!
女神や天使を官能的に、そして崇高に描いたロココの寵児・ブーシェの作品は大好き。
この世の悩みや争いごととは一切無縁の、ひたすら平和で優雅なだけの天上美。
何が悪い?!
憎しみ、妬み、恨み、不倫、暴行、殺人、拷問、テロ、戦争・・・残酷なことには事欠かない世の中に、この世とは無縁のただ美しいだけの世界があったっていいじゃない。
醜いものは十二分に堪能しました。
深遠な意味なんかなくていいのです。
美しければいいのです。
ようは単なるミーハーです(^_^;)

〇「未亡人と司祭」
ジャン・バティスト・グルーズ
Hermitage15.jpg
柔らかなタッチで描かれ、未亡人といえど、全く悲しそうではありません。
長女の娘の愛くるしい面立ちは、グルーズらしい。

〇「盗まれた接吻」
ジャン・オノレ・フラゴナールとマルグリット・ジェラール
Hermitage8.jpg
若い男女の恋物語というロマンティックな主題。
一番の目を惹くのは、女性のドレスの美しすぎる光沢。
この作品は、フラゴナールと義理の妹のジェラールの共作と言われ、ジェラールがこの照りのあるドレスを描いたと言われています。
ブーシェと並んでフラゴナールも大好き。
10歳のとき、初めて西洋画の美術展に行ったのが、フラゴナールの展覧会でした。
子供の私にとって、フレンチ・ロココこそ、西洋絵画への扉、私の絵画への開眼の原点だったのです。

最後に、今回の美術展の中での私のトップ3プラス1を発表。

プラス1から。
〇「聖母マリアの少女時代」
フランシスコ・デ・スルバラン
Hermitage6.jpg
赤い服を着た幼い少女は、少女時代のマリア。縫物をしていた手を留め、手を組んで、目を上にあげ、神に祈る姿は、なんとも清純で愛らしい。曇りのないまっすぐな瞳は、少女の純粋な心を表していて、こんな少女なら、神様も胸を射抜かれてしまったことでしょう。
「彼女こそ救世主の母にふさわしい」と思ったに違いありません。
世俗の垢にまみれきった私も、清純無垢なマリアの瞳に、完全に心をもっていかれました。
イエスの血の色を表す赤と白、青い衣も印象的な一枚です。
スルバラン、ブラボー!


〇「手袋を持つ男の肖像」
フランス・ハルス
Hermitage5.jpg
オランダ絵画らしい、黒い服を着て黒い帽子を被った男性の肖像画。黒い服に白い襟が目を惹きます。
男性は、三銃士の持つような厚手の皮の手袋をしています。
ハルスの、流れるような筆遣い、しかし、モデルの人間性、内面まで感じさせる表現力は、脱帽としか言いようがありません。
思わず、作品の前で「うま〜い!うますぎる」と声に出てしまうほど。
ハルスは作品によって、緻密に描いたり、流れるようなタッチで描いたりしますが、いずれにしても、モデルの内面をも表現する、卓越した画力の持ち主です。
ハルスの作品を見ると、その迫力、画力に、まわりの絵が霞んでしまいます。
ゴッホが「ハルスは27色の黒を持っている」と言った通り、黒という色ですら、それが与える印象を知りつくし、見事に描き分けています。

〇「聖ヒエロニムスと天使」
フセペ・デ・リベーラ
Hermitage10.jpg
リベーラの描く老人は、本当に見事。
老人の弛んでしわがれた皮膚の表現、天使が現れ、驚いた老人の表情。それらが、非常にリアルで、聖書の出来事が今、目の前で起こっているかのような奇跡を見せる。
カラヴァッジョ風のキアロスクーロ(明暗法)で描かれ、暗い背景からスポットライトが当たったように浮かび上がる聖ヒエロニムスに、老人の複雑な感情がドラマティックに表現されている。

〇「預言者モーセ」
フィリップ・ド・シャンパーニュ
Hermitage11.jpg
この画家の名前は、日本では滅多に聞かないし、おそらく美術展に来た人たちも、他の有名絵画に目を奪われ、この作品の前をさくさく通り過ぎるかもしれない。
でも、画家のネームバリューではなく、画家の画力、作品そのものの完成度を見てほしい。
石に刻まれた十戒を持つ預言者モーセ。
このモーセの見開いた瞳、顔に刻まれた皺、細かな髪と髭、鮮やかな青の衣、手前に置かれた手、どれをとっても完璧な表現力です。
石の窓枠(?)に突き出した十戒の石板の角、窓べりに掛けられた手は、絵画空間を突き破って三次元を表しています。
モーセの表情は、神から授かった大いなる戒めを、観者に訴えかける力強さに満ちています。
今回、シャンパーニュの秀作を見られたのが一番の収穫でした。

私が、シャンパーニュを知ったのは、今を去る四半世紀も前に、ロンドンのウォレス・コレクションで、彼の「受胎告知」を見たときでした。鮮やかな青い衣を纏い、大天使ガブリエルのお告げを神妙に聞くマリア、天には天使が舞い、藤色の衣を纏った大天使ガブリエルが高らかに神のお告げを伝える作品。
聖書の場面が、気高く荘厳に、そして喜びに満ちて描かれたこの作品の前でしばし動けなくなりました。この作品については、以前、絵画の庭「受胎告知」のブログで書いていますので、興味のある方はどうぞ。

額縁に関しては、残念ながら、各地から集めた作品を、エルミタージュに合わせて飾るために、おそらくオリジナルのものはほとんどなかったと思います。
バトーニの「聖家族」には、端先から、ラムズ・タングー、スコティア、ビーズ&リード、フルーテッド・コーヴ(間に稲穂の彫り?)、リーフ&ベリーの彫刻額がつけられていましたが、他の作品にも同じ額がつけられていました。
リベーラの「聖ヒエロニムス」には、端先から、ビーズ、ラムズ・タングー、アカンサス、エッグ&ダーツの彫刻額がつけられていました。
ルカ・カルレヴァリスの「ヴェネツィア、運河に面したドゥカーレ宮殿前の眺め」には、端先から、ラムズ・タングー、スコティア、フルーテッド・コーヴ、ビーズ、パルメット&ロータスのアンピール様式(帝政様式)のような額縁がつけられていましたが、これも、他の作品何点かに同じ額縁がつけられていました。
他にも、ルイ様式のフランス額風のものも同じようなのが何点かありましたが、彫りではなく、コンポジションによる型取り額のようなので、大量生産の額縁でしょう。
オランダ絵画には、黒いオランダ額風の額縁がつけられていましたが、これも年代物ではなく、黒檀でもなさそうなので、あまり価値のないもののようでした。
大量生産の額縁は、一つ一つの作品の時代や作品内容に合っているかというのは難しいですが、美術館自体の統一感という意味では仕方ないのかもしれません。
限られた額縁ヲタク以外、そんなことを気に留める人はいないので、絵画だけを見るという意味では、貴重な展覧会です。

大エルミタージュ美術館展では、イタリア、オランダ、フランス、スペインなどヨーロッパ各地の珠玉の名画が一度に見られるので、この美術展を見れば、ヨーロッパの美術館を一巡したような中身の濃さです。自分の目で、新しいお気に入り作品を見つける楽しさもあります。開催期間は、まだまだありますので、六本木でヨーロッパ絵画巡りを楽しんでみてはいかがでしょう。

余談ですが、美術展の出口で、主催の日本テレビの取材を受け、美術展の感想をテレビカメラの前でインタビューされました。びっくり。
必ず出るとは限りませんが、「大エルミタージュ美術館展」のテレビCMや公式HP、facebook、twitterにのるかもしれないとのことでした。
でも、質問にグダグダのコメントしかできなかったので、映らないかもしれません(^_^;)

ちなみに、
4月15日(土)午前10:30〜11:20
「又吉直樹が行くロシア・エルミタージュの旅」日本テレビ
という番組が放送されます。
美術展に行きたくなった方も、そうでない方も、又吉ファンの方も、そうでない方も(^_^;)
タダでエルミタージュを覗ける機会なので、見てみてはいかがでしょう?

posted by ひつじ at 17:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック