2015年03月29日

美術館紀行〜「グエルチーノ展」〜

グエルチーノ展
2015年3月3日〜5月31日/国立西洋美術館

ついに来日!グエルチーノ展!
グエルチーノは、私のお気に入り画家の一人ですが、まだ日本では馴染みがないようです。
バロックの画家といえば、カラヴァッジョが有名になりましたが、グエルチーノも卓越した画力を持つ画家です。
グエルチーノは本名ではなく、ニックネーム。本名は、ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルベリーニ。グエルチーノとは、「斜視の男」という意味だとか。イタリア語でguercioは、「斜視の」という意味です。
そんな有難くないニックネームで呼ばれるグエルチーノですが、ほぼ独学で絵を習得したそうです。よほどの才能だったのでしょう。

1591年に生まれたグエルチーノは、9歳でパオロ・サニョーニのもとへ、そして、16歳でベネデット・ジェンナーリのもとで修業した後、22歳で単独で仕事を始めます。
ボローニャのルドヴィコ・ルドヴィージ大枢機卿が、教皇グレゴリウス15世になったおかげで、グエルチーノは、1621年、ローマへ移住します。
この教皇がローマのピンチョの丘に建てたカシノ・ルドヴィージの天井画をグエルチーノが描きますが、その周りの建築的騙し絵は、アゴスティーノ・タッシが描いたそうです。
タッシといえば、私の過去ログ、アルテミジア・ジェンティレスキのコーナーでその悪名が載っています。興味のある方は、そちらもどうぞ。
後半生は、ボローニャに移住しそこで没します。
グエルチーノがボローニャに居を移したのは、この街の画家であり、彼のライバルであったグイド・レーニが亡くなったためだそうです。

今回は、グエルチーノの生まれ故郷であり、彼の作品が所蔵されているチェントの市立美術館が、2012年5月に起きた地震で倒壊寸前となり、彼の作品が海外へ持ち出される機会となりました。
奇しくも、私がグエルチーノ展に行ったのは、東日本大震災から4年の3月11日でした。

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○「聖母子と雀」1615-16年頃
若い頃の作品。穏やかな明暗の中で、聖母に抱かれたイエスが、聖母の指にとまった雀を見ています。イエスの左手には細い糸が持たれ、その糸は雀の脚に繋がっています。
リアルに表現された雀は、ゴシキヒワ同様、受難を象徴しているらしいです。
マリアの柔和な表情とイエスの子供らしいぷっくりしたお腹がなんとも愛らしい作品。

○「幼子キリストを崇める聖母と悔悛の聖ペテロ、聖カルロ・ボッロメーオ、天使と寄進者」1618年
明暗で描かれた天使やドラマティックなポーズのペテロがカラヴァッジョ的。

○「トラパニの聖アルベルトにスカプラリオ(略肩衣)を与えるカルミネの聖母」1618年
両手を掲げて衣を受け取るアルベルトのポーズは、オランスと呼ばれる祈りのポーズでもあり、ドラマティックな表現でもある。衣服の襞の描き方は、カラッチのそれを連想させる。

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○「キリストから鍵を受け取る聖ペテロ」1618年
柔和な表情のイエスは、人々のイメージを崩さない理想的なイエス像。ペテロに与える二つの鍵―金の鍵は天国の鍵で、銀の鍵は地上の権力を表しているのだそう。カトリックの総本山サン・ピエトロ大聖堂の礎を築いた聖ペテロの逸話にふさわしい。
天蓋を支える天使の動的なポーズは、バロックらしい。
作品自体非常に大きく、威厳に満ち、聖堂に飾られるにふさわしい作品。

○「聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス」1619年
グエルチーノは空の色が独特。空とイレネの服の青色が同じ青。
聖イレネは、海綿を水に浸し、絞っているのですが、私も工房で海綿を使う作業があるので、すぐに海綿に目が留まってしまいました(^_^;)

○「聖マタイと天使」1621-22年
若い天使と老人マタイが対照的に描かれている。若者のつやつやした肌と老人の皺深い肌の表現の違いが面白い。
グエルチーノは、聖書的主題を描きながら、同時に、一つの作品の中で、若者と老人の対比もよく描いていると思います。老人の枯れた表現は上手すぎ!

○「放蕩息子の帰還」1627-28年
2010年のボルゲーゼ美術館展でも来日した作品。
これまた三者三様の心理まで描かれた表現が見事。

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○「聖母のもとに現れる復活したキリスト」1628-30年
イケメン・ジーザス!このキリストだけで、ご飯が何杯も食べられそう(^_^;)
キリストの頭を頂点として、キリストの右腕、聖母へ繋がる三角形の構図が、画面に安定感を与えています。滑らかな筆致が、作品を格調高くしています。

○「スザンナと老人たち」1649-50年
人妻を誘惑するエロジジイ二人組のお話し(^_^;)
これも聖書の話をテーマにしていますが、スザンナの若い肌としわがれた老人たちの対比が面白い作品。

○「サモスの巫女」1651年
ウルトラマリンの青色のマント、赤いドレス、緑と赤のターバンを巻き、真珠の耳飾りをつけた巫女。シンプルな構図ですが、色彩豊かな作品で、お隣のグイド・レーニの作品と比べると格調の高さが別格。

○「聖フランチェスコ」1634年
両手を胸の前で組むフランチェスコ。天を見上げる瞳は潤んで、鼻先も赤くなっています。
岩の上には骸骨と本が置かれています。
全体が茶色い画面は、聖人の修業の厳しさを感じさせます。

○「説教をする洗礼者聖ヨハネ」1650年
赤い布に毛皮の腰布、左手に葦の十字架を持つヨハネは、人差し指を立て右手を高く上げ、天を指しています。顔は、キリストに似て威厳があります。

最後に、額縁について。
今回は、特筆すべき額はあまりありませんでしたが、それは、大きな作品は教会に飾られるために額装を必要とせず、美術館に移されてから、額装されたせいかもしれません。

○「聖フランチェスコの法悦」
外端から、アカンサス、くり型、リボン&スティック、アール。

○「放蕩息子の帰還」
外端から、ビーズ、くり型、エッグ&ダーツ。

○「クレオパトラ」
外端から、植物の彫り、ラムズ・タングー、パンチング、四隅に丸い花の彫り、ビーズ&リード、ガドルーン。

グエルチーノの作品は、他のカラヴァッジェスキのように明暗で描かれていますが、大仰な身振りはあまりなく、抑えたポーズの中に秘めたドラマ性を感じさせます。内面的な表現が彼の作品に厳かな品格を与え、格調の高い作品となっています。
次は、カラッチョロあたりやってくれないかな〜。


posted by ひつじ at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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