2014年09月26日

美術展紀行〜オルセー美術館展〜印象派の誕生・描くことの自由〜

2014年7月9日〜10月20日/国立新美術館

久々のブログ・アップです。夏は暑くてブログを書く気にもなれず、またブログにアップするような話題もなく、ダレダレ。
秋になり、重い腰をあげてオルセー美術館展に行ってきました。
一度目のパリでは、悲しいかな、バスの車窓からしか眺められなかったルーブルとオルセー。二度目のパリでは、ルーブルには行けたけれど、オルセーまで行く時間がなかったので、今までオルセーには行ったことがありません。見たい作品は山ほどあれど、叶わぬ夢・・・と思っていたら、作品のほうからやってきてくれたではありませんか!
「オルセー美術館展」といっても、所詮、有名どころは1枚か2枚だろうと思っていたら、珠玉の名画があっちにもこっちにも!
「えっ、コレ本物?!」と目を疑ってしまうほど。嬉しい裏切りでした♪
久々にテンション上がりまくり、ようやくブログを書く気になりました。

○「バジールのアトリエ、ラ・コンダミンヌ通り」フレデリック・バジール
会場に入ると一番に飾られているのがコレ。以前も来日したことがあります。
芸術仲間たちが描かれたバジールのアトリエ。イーゼルの前の背の高い男性がバジール本人で、後からマネによって描き加えられたそう。バジール本人は普仏戦争で亡くなってしまうのです。

○「笛を吹く少年」エドゥアール・マネ
あの有名作品がついに目の前に!遠近感のないサンドベージュの背景に笛を吹く少年が立っています。上着と帽子の艶っぽい黒がいい。ズボンの赤が印象的。少年の服と帽子の黒、白、赤が効いています。結構大きな作品で迫力あり。

○「落穂拾いの女たちの招集」ジュール・ブルトン
一日の終わり、薄暮の中、農作業を終えた女たちが帰るところ。
刈り取った麦の穂を頭に担ぐ女性を中心に農婦たちが描かれています。
画面左に女たちを招集する老人が描かれ、左上には三日月、そして羊の群れが描かれています。農作業という労働にも関わらず、全体を厳かな雰囲気にしているのは、ここに描かれた夕暮れの光の美しさのせいかもしれません。

○「セーヌ河畔のブドウの収穫」コンスタン・トロワイヨン
馬車を曳く白いロバに当たる光が、マッキアイオーリの白い牛に当たる光を彷彿とさせました。

○「羊の群れのいる風景」シャルル・ジャック
これも仔羊の毛に夕陽の光が照らされています。一日の終わり、羊飼いが羊たちを連れ帰る場面。羊たちを誘導しようと前を行く牧羊犬はどこか得意そう。

○「干し草」ジュール・バスティアン=ルパージュ
草地に寝そべって昼寝をする男と身を起こしている女。何かを一身に見つめる娘は、農民らしい無骨な印象。

○「アルジャントゥイユの船着き場」クロード・モネ
DSCN7251 (640x480).jpg
これは、2007年の「オルセー美術館展」に来ていました。画像も、そのとき買ったポストカードから。画面左手の木々がだんだん小さくなって奥へ続く構図。それに沿って散歩道が続き、そこを歩く人々が描かれています。木々が長い影を落とす土手にも、くつろぐ人々の姿が。川には白い帆の舟が浮かび、青空には羊雲が浮かぶ、のどかな昼下がりの情景です。

○「サン=ラザール駅」クロード・モネ
かの有名なモネの「サン=ラザール駅」。蒸気機関車が煙を吐きながら駅へ入ってくるところ。鉄骨とガラス張りの駅は、当時ではモダンだったのでは。

○「洪水のなかの小舟、ポール=マルリー」アルフレッド・シスレー
DSCN7250 (640x480).jpg
これも、2007年「オルセー美術館展」で来日。画像も、そのときのポストカードから。
先程のモネの絵のように、洪水の後の青空には羊雲が浮かんでいます。
空を映した水面。舟に乗る紳士二人は、過ぎ去った洪水のすごさを語り合っているのかもしれません。

○「ルーヴシエンヌの道」アルフレッド・シスレー
DSCN7244 (640x480).jpg
ポストカードの色がキツイけれど実物はもっと穏やか。
木々の繁る田舎道には、夏の(?)日差しが地面を照らしています。小道を歩く人が観者を画面奥へ誘います。のどかな田舎の夏を感じさせる一枚。

○「ルーブシエンヌの雪」アルフレッド・シスレー
DSCN7243 (640x480).jpg
「ルーブシエンヌの道」と対になっているような作品。
塀と垣根に挿まれた雪道を女性が一人歩いている情景。今にもまた雪が降り出しそうな灰色の空。冬の凍った空気を感じさせながらも、どこか温かみのある作品。
やっぱりシスレーは好きかも。

○「バレエの舞台稽古」エドガー・ドガ
DSCN7249 (640x480).jpg
衣裳を纏って通し稽古をするバレリーナたちの情景が、セピア色でまとめられています。
セピア色の中に舞台照明が当たる衣装の白が際立ちます。
画面奥には、まるで観者が鏡に映ったかのように、シルクハットの男性が座り、踊り子を見つめています。

○「ダンテとウェルギリウス」ウィリアム・ブグロー
優美なニンフや天使を描くあのブグローの意外な一枚。
大画面では、二人の男たちが死闘を繰り広げています。一人は、膝で敵の腰を打ち、腕をひっぱりながら、相手の喉元に噛みついています。噛まれた方は顔を真っ赤にしながら、相手の髪の毛をひっぱっています。決着は明らかですが、二人の男たちの絡み合う肉体表現が圧巻の一枚。その脇では、赤い服のダンテと月桂冠を被ったウェルギリウスが立っています。人間の業を冷静に見つめる二人の文人が、死闘を繰り広げる男二人と対照的です。

○「パスカ夫人」レオン・ボナ
DSCN7247 (640x480).jpg
黒い毛皮の縁取りのある白いドレスを纏った女性。まっすぐ前を見据える女性は威厳があり、正統派の美しさがあります。色彩のない世界の中で、右の指にはめられたトルコ石と左の指にはめられたエメラルドの指輪が色を添えています。

額縁も、作品によって個性があり、額縁だけでも意義のある展覧会でした。
ここで額縁についても忘備録。

○「ピアノを弾くマネ夫人」エドゥアール・マネ
内端からラムズ・タングー、ビーズ、エッグ&ダーツ。

○「羊の群れのいる風景」シャルル・ジャック
内端からラムズ・タングー、リボン&スティック、フルーティング、リーフ&ベリー。
羊の絵だけに、額縁もラムズ・タングーがあり(^_^;)

○「バビロンを建設するセミラミス」エドガー・ドガ
赤地にグラッフィート。

○「ヴィーナスの誕生」アレクサンドル・カバネル
内端からビーズ、鱗模様、アカンサス、四隅に貝殻、リーフ&ベリー。
海の泡から生まれたヴィーナスに合わせて、青海波のような鱗模様と貝殻の彫り物がついた額縁。

○「灰色と黒のアレンジメント第1番」ホイッスラー
ホイッスラーのこの有名な作品につけられたのは、重厚なクッション・リード額。
今回、クッション・リード額を観られたのが一番の収穫。リード額は、ラファエル前派のロセッティらによって使われ、その影響を受け、ドガが新しいクッション・リード額を考案するのですが、ホイッスラーは自分がリード額を用いた最初の画家だと主張するのです。ホイッスラーの大作にクッション・リード額がつけられていたのを観て、その逸話を思い出してしまいました。そうやって見ていくと、額縁にも画家や作品との関連性があるので面白いです。

余談ですが、この作品の素晴らしさにも関わらず、私はある映画を思い出してニヤニヤしてしまうのです。
映画Mr.ビーンの中で、この作品がオルセーからアメリカの展覧会に出品されることになります。
ホイッスラーの母の肖像がアメリカに里帰りということで、「画家の母帰国」と大々的に宣伝されます。
学芸員に仕立て上げられたMr.ビーンがアメリカに渡り、この絵と対面しますが、思わずくしゃみをし絵を汚してしまいます。汚れをふき取ろうとすると誤ってインクを絵につけてしまい、さらにそのインクをシンナーで拭くと絵具が取れてしまうのです。母の顔が消えてしまった、これは大変!なんとかしようと慌てるMr.ビーン。インクで勝手に母の顔を描き足しますが、このド素人の漫画チックな絵が可笑しすぎる(^_^;)
ホイッスラーのこの絵を見ると、反射的にビーンが描き足した絵を思い出してしまって、笑ってしまうのです。せっかくの名画なのに(^_^;)
すったもんだの挙句、原画の上に展覧会のポスターを張り付け、額に入れて、会場に展示。
観に来た客たちは「これがあの有名な母の肖像画か」と感心、ことなきを得るのでした。って、酷すぎるオチ(^_^;)さすがMr.ビーン(^_^;)
なんだかまたMr.ビーンが見たくなったな〜。ドラマ再放送してくれないかしらん。

最後に、私が観たかった作品を3点。

○「ヴィーナスの誕生」アレクサンドル・カバネル
DSCN7252 (640x480).jpg
是非是非見たかった作品。ついに夢が実現!生きてて良かった!
青い波の上に横たわる美しいヴィーナス。白く滑らかな柔肌の表現が見事。波のように豊かに流れる黄金の髪。
DSCN7253 (640x480).jpg目覚めたばかりのヴィーナスの視線が魅惑的。こんな絶世の美女に見つめられたら誰でもイチコロでしょう。これぞ究極の理想美。ヴィーナスの誕生になぞらえて描かれた裸体画の傑作です。
ヴィーナスの誕生を祝う5人の天使たち。二人はほら貝を吹いて祝っています。
気になったのは、天使の青い羽根の描き方が雑だったこと(^_^;)
ま、ヴィーナスに目を奪われて、そんなことは些末なことですが(^_^;)
ちなみに、展覧会で売っていたポストカードは実物より色がきつかったので、うちにあっったポストカードで画像をアップしました。
もう少し実物の淡い色合いでポストカードを作ってほしかった。
「ヴィーナスの誕生」は、もう一枚見たい絵が、オルセーにあります。
先程のブグローのヴィーナスです。
DSCN7256 (640x480).jpg←コレ
今回は来日しませんでしたが、次はこのヴィーナスが観たい!!

○「床に鉋をかける人々」ギュスターヴ・カイユボット
DSCN7237 (640x480).jpg
見た瞬間、「おぉ〜!」と声が出てしまった。ついに本物と対面!
是非、実物を見たかったカイユボットのこの作品。来日してくれて嬉しいことこの上なし。
部屋の床に鉋をかける半裸の男たち。画面奥の窓から差しこむ光によって、鉋をかけた木の質感、まだ鉋掛けされていない木の質感が非常に上手く表現されています。作業をする男たちのリアルなこと。実物を見て発見したのは、真ん中の男の薬指に指輪が光っていること。家族のために頑張って働いているんですね。
「オイ、この床半分終わったら休憩しないか?」
「ああ」
なんて、男たちの会話まで聞こえてきそう。その会話を演出するかのように、画面右端には、休憩に一杯やるためのワインとグラスが置かれています。
そんな二人をよそに、もう一人の男は次の作業の道具を取ろうと手を伸ばしたところ。
画面一番手前には鑿の一部が描かれ、観者へ向かう空間の繋がりをもたせています。
目の前で今まさに作業が行われているかのようなリアリティに思わず引き込まれる作品です。

○「かささぎ」クロード・モネ
DSCN7239 (640x480).jpg
2007年にも来日した、個人的に大好きな作品。
感想は、過去ログにも書いたので、そちらをどうぞ。
再度見ても、感激でゾクゾクしました。
よく見ると、モネは白い雪を表すのに、青やピンク(薄い赤)の点を使っています。
そして、この青とピンクを混ぜてできる色、藤色こそがモネの作品におけるキー・カラーだと私は思っています。モネは並外れた色彩感覚を持つ人だったと思うのです。他の画家以上に色の効果というものを熟知していた画家だと思います。モネは見たままの色をキャンバスに載せたのではなく、単純に描きたい色をキャンバスに置いたのでもなく、絵を観る者に与える色の効果というものを熟知し、最も効果的な配色でもって描いた画家だと思うのです。そうやって観ていくと、モネの作品には共通した配色があるのに気づきます。それは、他の画家の作品にはないような色の効果で、色彩分割を行った印象派の中でも、モネは突出した才能の画家、まさに印象派の中の印象派だったと思うのです。

posted by ひつじ at 13:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック