2014年05月20日

美術展紀行〜「ポルディ・ペッツォーリ美術館展」〜

「ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館〜華麗なる貴族コレクション〜」

開催期間もあとわずかとなった「ペッツォーリ美術館展」。
前売りチケットを買っていたにもかかわらず、なかなか行けませんでした。
久々に生の絵画、生の額縁を見ると、美味しいものを食べたような充足感、満足感で脳内がいっぱいになります。
特に、イタリアの額縁はやはり素晴らしい。
テンペラと一体になった祭壇額や立派なトンド(円形)額など見ごたえたっぷりでした!(^^)!
ということで、絵と額縁の両方にコメントを。


●「ジャン・ジャコモ・ポルディ・ペッツォーリの肖像」
ジュゼッペ・ベルティーニ
DSCN7094 (484x640).jpg
暗色の背景に黒のタキシードを着た品のある男性が描かれています。
知的で高潔な人柄を伺わせます。
左右に分かれた長い髭がインパクト大。
≪額縁≫
内側からラムズ・タングー、ドングリ、葡萄などのフルーツの彫り、そしてガドルーンの平らバージョン。

●「ジャン・ジャコモ・ポルディ・ペツォーリの寝室」
≪額縁≫
内側からリーフ&スティック、フルーツの彫りの額縁。

●「ジョヴァンニ・フランチェスコ・ブリヴィオの肖像」
≪額縁≫
内側から、ビーズ&リード、プロフィール四隅にアイビー柄のグラッフィート、ガドルーン。

●「三連祭壇画」
ベルナルド・ダッディ

絵と額縁が一体化した祭壇画。
聖母子を真ん中に、向かって左側にイエス降誕の場面、右側に磔刑図が描かれています。
額縁は祭壇画の枠囲いとして生まれ、やがて絵と額は切り離され、現在のような取り外しのできる形へ発展していきます。
≪額縁≫
三角の切妻があり、頭頂にはフィニアル(頂上飾り)がついています。

●「聖アグネスとアレクサンドリアの聖カタリナのいる聖母子」
ピエトロ・ロレンツェッティ
DSCN7097 (373x640).jpg
紺色のマントを纏い赤い服のマリアが幼子イエスを抱いている典型的な構図。
黄金背景には天使たち。マリアの両側には、仔羊のアトリビュートの聖アグネスと車輪のアトリビュートの聖カタリナが描かれています。
≪額縁≫
三角の切妻額。中の絵に合わせてオジー・アーチが組まれています。

●「アルテミジア」
グリゼルダの物語の画家
DSCN7095 (372x640).jpg
襟と袖に金の刺繍のある黒いドレスに、シックなグレーのマントのアルテミジア。
金杯を手に、ボッティチェリの描くような女性が俯いて描かれています。
全体から漂う清楚で上品なイメージは、この絵の画家が優れた画家であることを想像させます。
作品脇のプレートには「グリゼルダの物語の画家」と書いてあるだけ。
でも、作品につけられた額には、“Luca Signorelli”(ルーカ・シニョレッリ)の名前が!
シニョレッリの作品ではないの?
≪額縁≫
柱のある豪華なタベルナクル額。何層構造にもなっていて、非常に立派。
中の作品により威厳を与えています。
対の「カタリナ」にも同じようなデザイン(柄が違う)のタベルナクル額がつけられています。

●「アレクサンドリアの聖カタリナ」
ベルゴニョーネ

先程の「アルテミジア」とそっくりの豪華なタベルナクル額に入れられています。
が、絵の質は、「アルテミジア」には及ばず。
こちらも額縁にも”Anbrogio Borgognone”と画家の名が書かれています。
額縁には”Borgognone”という綴りになっていますが、プレートには” Bergognone”という綴り。
どちらが正しいのか、それから、先ほどのシニョレッリの作品のことも聞いてみようと、近くにいた男性学芸員に方に聞いてみると「調べます」とのこと。
後から、その学芸員が私を追いかけてきて説明してくださったところによると、「アルテミジア」の画家は、かつてシニョレッリと思われていたので、額縁にその名を入れたが、後の研究でシニョレッリの作品ではないということになったので、作品脇のプレートには「グリゼルダの物語の画家」と書かれているそう。へ〜、そうなんだ。でも、だったら、そのことも記載しておいたほうがいいかも。
いずれにしても、「アルテミジア」が高貴な作品であることには変わりありません。
ベルゴニョーネは、”o”でも”e”でも、どちらの綴り方もあるとのことで、プレートには”e”
になっているとのこと。
細かいことでも気づいたら学芸員の方に聞いてみると面白いですね。

●「死せるキリストへの哀悼」
サンドロ・ボッティチェリ
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十字架から降ろされたイエス、イエスを膝にのせたまま気を失うマリア、マリアを支える福音者ヨハネ、その後ろにアリマタヤのヨセフ、イエスを抱えるマグダラのマリアと、イエスにまつわる人物たちの複雑な構図の作品です。
非常に硬い線で描かれていて、「誹謗」の絵に似た印象です。
ボッティチェリがサボナローラの影響を強く受け、ルネサンスの優美な画法を捨てた後に描かれたものというのがよくわかります。

●「玉座の聖母(ツバメの聖母)」
フラ・バルトロメオ
≪額縁≫
長方形の額縁ですが、上部に、楕円の絵に合わせてスパンドレルが施されています。

●「聖母子と幼い洗礼者聖ヨハネ」
ピントリッキオの工房
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細かい金の刺繍のある紺のマントに赤い服のマリア。マリアの膝の上のイエスは、珍しく赤いサンダルを履き、赤いネックレスをしています。
傍らにいるヨハネは、皮の衣の上に赤いマントを羽織り、この絵の中では赤が際立っています。マリアの背景の黄金装飾も豪華です。
円形の絵は、婚礼の祝いに贈られることが多いので、この作品もそうかもしれません。
≪額縁≫
イタリアらしい見事なトンド(円形額縁)。
内側から、ビーズ&リール、エッグ&ダーツ、ギローチェ、ラムズ・タングー。
豪華な彫りの立派な額縁に圧倒されます。
図録に額縁が載らないのは、つくづく残念。

●「自画像」
≪額縁≫
サンソヴィーノ額にあるような巻物の彫りが施された額縁。

●「大修道院長聖アントニウス」
ルーカ・ジョルダーノ

暗い背景に黒い服を着たアントニウスが天を仰いでいます。右手には鈴のついた杖を持ち、左手には本のようなものを持っています。
明暗を使ったドラスティックな表現は、カラヴァッジョの作風を連想させます。

●「レベッカ」
ジュゼッペ・モルテーニ
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ウォルター・スコットの小説「アイヴァンホー」のヒロインを描いています。
「アイヴァンホー」は12C末のイギリスを舞台にした物語。
余談ですが、イギリスといえば、この美術展に来る途中、電車の中でイギリス人と話す機会がありました。
人身事故で電車が各駅にしか止まらず、隣に座っていた白人さんが立ち上がって駅名を確認しようとしていたので、駅名を教えてあげました。
そんなことで、少しお話することに。
その人は、イギリスのブライトンから日本の大学に地元の学校の紹介をしに来ているのだそうです。ブライトンの位置がわからなかったので尋ねると、学校のパンフレットを出して、地図を見せてくれました。ブライトンは、南英の海沿いの街でした。
ブライトンの学校に留学する日本人はホストファミリーと生活するとのこと。
何人くらい日本人の留学生がいるのか尋ねると、「そのときによるけど、25人くらいかな。
英語を学ぶ人もいれば、技術を学ぶ人、大学をめざす人などがいるよ」と言っていました。
「日本人の学生は真面目で勤勉」というので「日本人らしい」というと「そう、それが日本人だね」と。
私が「イギリスに行ったことがある」と言うと「どこへ行ったの?」と聞くので「湖水地方」と言うと、「あぁ、綺麗な場所だね。僕も子供の頃、湖水地方に行って山に登ったよ」と言っていました。「どこで英語を習ったの?」と聞くので「学校で」と普通の答えをしました(^_^;)
ま、私の英語レベルは中学・高校英語ですから(^_^;)
そのイギリス人は、○星大学へ行って、これから新宿へ行くと言っていました。「高田馬場の学校へ行く」と言うので「早○田大学?」と聞くと「そう」との答え。
東京のみならず、名古屋、神戸、京都、大阪の学校も2週間で周るそう。日本には18回も来ているとか。
「日本の電車は時間に正確でとても良い、イギリスの電車はダメだ」ということを言っていたので、心の中で「そうだよね〜」と思いつつ、「でも、今日はアンラッキーだったわね」と言うと、「そうそう、今日はアンラッキー!」と笑っていました。
ちょうど、ある駅で向かい側に急行が来たので、「あの電車のほうが早い」と教えたら、喜んで乗り換えていました。
見ていると、彼は何度も振り返って笑顔で手を振ってくれました。
う〜ん、さすがイギリスのジェントルマン。
久々に生で聞くクイーンズ・イングィッシュはやはり耳触りが良い!
巻き舌のアメリカ英語よりずっと聞き取りやすいし、何よりノーブル。
ちょっと鼻にかかったようなあの発音が、すっと入ってきて心地よい耳触り。
日本は、学校で習う英語というとアメリカ英語ばかりなので残念な気がします。
イギリスに行ったとき、ヨーロッパ人が学んできたイギリス英語と日本人のアメリカ英語の微妙な違いに困惑したものです。
アメリカ英語もいいけれど、クイーンズを学ぶ機会も選択できるようになるといいのにと思います。
と、絵から関係のない余談が長くなりました(^_^;)
≪額縁≫
内端にラムズ・タングーの彫り。あとはシンプルな刳り型。

●「風景」
アントニオ・フォンタネージ
≪額縁≫
内側から、ビーズ、アカンサスの彫り、リボンと花のモールディング、ラムズ・タングー。

●「貴婦人の肖像」
ピエロ・デル・ポッライウォーロ
pollaiolo.jpg
本日のメイン・ディッシュ。
清楚な金髪の女性の横顔。凝った髪型に真珠の髪飾り、真珠と金とルビーのネックレス、金の刺繍のある深緑のドレスに赤白の柄の袖が豪華です。
見るからに品の良い貴族の令嬢という感じです。
昔のお見合い写真のような役割をしていたのかもしれません。
≪額縁≫
内側からビーズ&リード、蔦のような植物の彫りにパンチングを施した額縁。
派手すぎず、清楚な女性を引き立てるような額縁です。

ペッツォーリは若くして親の財産を受け継いだ貴族。
生涯独身だった彼は、絵画や武具など様々な美術品を収集し、それらを一般公開する美術館を作ったのです。
う〜ん、憧れの人生(^_^;)
あ〜、でも、大金持ちになって美術品を収集するより、工芸職人として作品を残すほうが憧れるかな。
画家とは違って、作品は残れど名は残らず、なんて究極のダンディズム。カッコ良すぎでしょ〜(*^_^*)

posted by ひつじ at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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