2014年04月13日

バレエ末席物語〜「椿姫」シアラヴォラ&ガニオ〜

「椿姫」
マルグリット・・・イザベル・シアラヴォラ
アルマン・・・マチュー・ガニオ
デュヴァル氏・・・アンドレイ・クレム
ほか パリ・オペラ座バレエ団

アップがとても遅くなりましたが、パリ・オペの「椿姫」の感想を。(←遅すぎ)
ガラで踊られることも多い「椿姫」ですが、全幕は、友人がダビングしてくれたDVDでしか見たことありませんでした。
初めはやや老けたマリシア・ハイデのマルグリットに「どうしてアルマンが惹かれるの?」という気もしなくもありませんでしたが、物語が進んでいくうちに、マルグリットは若くてはいけない、若い輝きを失っていく女性でなければいけないのだと気づきました。

今回は、アデューのアニエス、シアラヴォラ、オレリーと豪華キャスト。パートナーも、マチューやエルベ、。
行けることなら、全ペア見に行きたかったけれど、末席も高いパリ・オペ公演は1公演見るのがやっと。私が行くことにした公演は、シアラヴォラ&マチュー・ペア。何故、このペアを選んだかというと、シアラヴォラが3人の中で一番枯れ感がありそうだったから(^_^;)
オレリーはマルグリットには美しすぎる気がしたし、アニエスは好きなダンサーだけれど、ガラの映像で見た彼女のマルグリットは、ちょっと私のイメージと違っていたので。
昔、出待ちをしていたとき、楽屋口からシアラヴォラが出てきたので、カメラを向けると、立ち止ってニッコリ笑顔で写真を撮らせてくれたことがあります。その時の印象も良かったし、最後に彼女の全幕を見ておくのもいいかなと。
シアラヴォラも、2月でアデューでした。ベテラン・エトワールがどんどん減っていく〜。
それにしても、パリ・オペ人気は不動なようで、高いチケットでも、上の階までうまっていて大入り。3階以上がガラ空きだったABT公演とは偉い違い(^_^;)

○プロローグ
舞台はすでに幕が開いていて、長椅子やカーペット、ピアノなどが置かれている。
亡くなったマルグリット・ゴーティエの家でのオークション。
長椅子には、マルグリットの肖像画と麦藁帽子が置かれている。
喪服のナニーナがやってきて、長椅子に座り、マルグリットの肖像画を愛おしそうに眺める。この肖像画、シアラヴォラにとてもよく似ていた。たいてい、セットの肖像画(ラ・バヤのソロルとか)は、誰にも似ていない肖像画なのに。翌日の公演も見に行く友人に確認してもらったところ、翌日の肖像画はオレリーにそっくりだったそうなので、それぞれの主役に合わせて作ったんですね。
次々と男たちがやってきて、カーペットなどを運び去っていく。
アルマンの父デュヴァル氏も現れる。N伯爵がマルグリットの肖像画を見ると、口に手をあてて嘆き去る。マルグリットを愛していた人がここにもいる。
マチュー/アルマンが絶望的な表情で登場。
椅子に掛けられた、マルグリットの紺色と水色のドレスをプリュダンスが持ち去ろうとすると、マチュー/アルマンがそれを取り返す。悲嘆にくれるアルマンは、デュヴァル氏にマルグリットとの思い出を語り始める。
私は、L側だったので見えませんでしたが、友人情報によると、デュヴァル氏がL側に座って、ずっと回想の場面を眺めているという演出だったそう。

○第1幕
舞台はあっという間にヴァリエテ座へ。バレエ「マノン」を見に来たシアラヴォラ/マルグリット。前回の「マノン」繋がり(^_^;)
アルマンは友人ガストンに誘われてやってくる。そこで、紳士たちに囲まれている赤い椿を胸にさしたマルグリットに出会う。
マルグリットとアルマンは、劇中劇のマノンとデグリューに自らを重ねて、対になって踊る。
マノンはまだいいにしても、デ・グリュー、いくら劇中劇らしさを出すにしても、あのバカ殿メイクはどうよ(^_^;)
変すぎてマノンのストーリーに入り込めない(^_^;) 
デ・グリュー役のデュケンヌ、体が重くてあまり上手いとは言えなかったし。
マチューと踊るとよけいに差が(^_^;)
マチュー、脚が綺麗に伸びて美しい踊り。
ユルゲン・ローゼの衣装や美術は美しいし、パリを舞台にした椿姫はパリ・オペにふさわしい。けど、コールドは、着地の足音がドタドタしてうるさい。もっと軽やかに着地してください。
久しくパリ・オペ公演を観ていなかったので、コール・ドの中で知っている名前は、ヤン・サイズだけだった。

舞踏会場で、ソファに腰かけたマルグリットの周りをN伯爵がウロウロ。なんとかマルグリットの気を引こうとするが、マルグリットはそっけない。
やってきたアルマンには優しく相手をする。
N伯爵があまりにしつこいので、思わず平手打ちをするマルグリット。
急に咳き込み部屋を後にする。

一人鏡の前に立ち、自らの姿を映すマルグリット。紺色のドレスが品が良い。
シアラヴォラはわりとさらりと流していたけれど、ガラで観たアイシュヴァルトは、このシーンの「間」の取り方が絶妙。
人々の前では明るく華やかに振る舞っているけれど、本当は病に侵され、年をとっていく自分に不安でたまらない。
本当の姿を映し出す鏡の前のマルグリットに胸締め付けられる。
レカミエに身を投げ出すマルグリット。
アルマンが現れると、先ほどまでの不安や弱々しさを押し隠し、魔性の女を演じる。
手で招くようにアルマンを誘う。
ひれ伏し、マルグリットに一途な愛を捧げるアルマン。
マチューのジュテは伸びやか。
アルマンの一途な情熱に心動かされるマルグリット。
アルマンの前では、一人の純粋な女になれる。
マルグリットはアルマンに愛の証である椿を贈る。
マチュー/アルマンは上手脇のカーペットに座り、椿の香りを嗅いだり撫でたりする。
舞踏会では、ブルーの衣装のコール・ドたちが踊り、水色のドレスのマルグリットも男性たちにサポートされて美しく踊る。
このとき、胸につけた白い椿が床に落ちてしまったが、さりげなく誰かに片付けられていた。でも、これがミスなのか演出なのかわからず、翌日も見に行った友人に確認してもらったところ、オレリーのときは、眠っているエルヴェ/アルマンに白い椿をそっと捧げ、目覚めたアルマンが大喜びするという演出だったそう。
ブルーの次は、赤い衣装で踊るコール・ド。マルグリットも、赤いドレスに黒いヴェールで華やかに踊る。
マルグリットは、舞台脇のアルマンのもとへ行き抱き合うが、ナニーナに連れられ、上手へ去る。

白いドレスに麦藁帽子を被ったマルグリットは、旅支度をして、パトロンの別荘へ向かうが、そのときアルマンも誘う。喜んでついていくアルマン。

○第2幕
白を基調にしたコール・ドがとても美しい。さすが、ユルゲン・ローゼ。
ピアノ演奏も演出の一部で、舞台の上にある。
男性のパ・ド・トロワやパ・ド・シス、ガストンの鞭の踊りなど見ごたえたっぷり。
ピルエットにジュテに途切れることなく踊りまくり。
面白いのは、ガストンとプリュダンスとナニーナのパ・ド・トロワ。
ナニーナ、長いドレスで懸命に踊りについていこうとするところがコミカル。
ナニーナがちょっと自分の立場(仕事)を忘れて、遊びに加わるところが、田舎の解放感を表している感じ。ノイマイヤーは、それぞれの役柄にちゃんとキャラクター設定をしているらしい。
でも、コール・ドの踊りはそこそこに、マルグリットとアルマンの様子が気になって、ついオペラ・グラスで二人を追ってしまった。
マチュー/アルマンはラブラブ目線でマルグリットを眺めていた。
マチューの若いアルマンとお姉さまシアラヴォラ/マルグリットはお似合い。
やがて、マルグリットも踊りに加わり、男性陣にサポートされながら踊る。そこへ、アルマンも加わる。シアラヴォラ/マルグリットは溌剌とした笑顔で輝いていた。マルグリットの最も幸せな瞬間。
ガストンが鞭の踊りをカッコよく決めると、クッションが飛んでくる。それで、皆でクッション投げが始まる。なんだか、日本の修学旅行の枕投げに似ている(^_^;)
突然、ピアノがバーンと鳴り響き、パトロンである公爵が登場。
マルグリットとアルマンが親しくしているのに腹を立てる。
アルマンは諦めて立ち去ろうとするが、マルグリットがアルマンの前に立ってかばう。
アルマンの手を自分に巻きつけ、二人の仲を強調する。
公爵からの贈り物であるネックレスを投げ捨て、愛を選ぶ。
ここが、マノンとマルグリットの違い。デ・グリューへの愛よりGMの豪華な贈り物に心動かされるマノンと違い、同じ娼婦でも、富よりアルマンへの愛を選ぶマルグリット。ノイマイヤーが対比させたかった「マノン」と「椿姫」の違いがここにある。
真剣な場面で面白かったのは、マルグリットが捨てたネックレスをプリュダンスが拾って胸にしまってしまうところ。ちゃっかりしたやつ(^_^;)こういう人間は世渡りも上手い。
純粋で不器用な人間ほど、人生の壁にぶちあたり、世の流れを上手く超えられない。

髪をほどき、豪華なアクセサリーもなくなったマルグリットは、ただ純粋にアルマンを愛する一人の女性である。
二人の愛のパ・ド・ドゥは、マルグリットが長い髪を振り乱すし、ふわふわしたドレスの裾があるし、サポートする男性ダンサーには踊りにくいところ。
シアラヴォラ/マルグリットはマチュー/アルマンの顔にスカートがかかったとき、本当にさりげなくどけていて、こういうお姉さま的心遣いにアルマンは惹かれるのだな〜なんて思ってしまう。
シアラヴォラの足先は信じられない動きをする。足首が非常に柔らかい。トウで立つとき、90°ではなく、甲の側に120°くらい傾いたバランスで立っていた。私なら確実に骨折する(^_^;)
足先が手のようで、つい、昔、ボニーノがチャップリン・メイクで首にチュチュのような襟をつけて、手にトウシューズを履いて踊っていた手を連想してしまった(^_^;)

愛のパ・ド・ドゥが終わり、一人でいるマルグリットのもとに、アルマンの父デュヴァル氏が現れる。
髪をまとめ、ショールを羽織り、きちんとした佇まいをして迎えるマルグリット。
挨拶のキスのため、デュヴァル氏に手を差し出すが、デュヴァル氏はそれを拒絶。
頑ななデュヴァル氏は、息子が高級娼婦と付き合っていることが許せない。
マルグリットにアルマンと別れるよう説得するが、マルグリットはアルマンへの純粋な愛を訴える。このパ・ド・ドゥの振付も、互いの心理描写を上手く表している。
娼婦でありながら息子を真剣に愛するマルグリットの気持ちに打たれたデュヴァル氏。
マルグリットをあやすように抱き上げ共に踊り、息子を想うなら別れてくれと説得する。最後はマルグリットを憐れに思い、レディへの礼儀を尽くし、自らマルグリットの手にキスをして立ち去る。

アルマンが戻り、マルグリットはアルマンとの別れを覚悟しながら、パ・ド・ドゥを踊る。
アルマンを去らせ、マルグリットは旅立つ。
乗馬から戻ったアルマンは、マルグリットを待ちながら、マルグリットのショールに口づけたりするが、ふと不安な思いに駆られる。
そこへ、ナニーナがやってきてアルマンにマルグリットからの手紙を渡す。
別れの手紙を読んだアルマンは激しくショックを受ける。裏切られた怒りと哀しみのソロ。とても感情が入っていた。純粋な分だけその傷も深い。

○第3幕
シックな衣装の人々が行きかうシャンゼリゼ通り。
そこで、偶然出会うマルグリットとアルマン。
だが、プリュダンスが現れ、アルマンに言い寄る。
マルグリットへの当てつけに、アルマンはプリュダンスに親し気に振る舞う。
二人の仲を見て傷つくマルグリット。
アルマンとプリュダンスは舞台脇のカーペットの上で抱き合う。
だが、やはりマルグリットを忘れられないアルマンは、プリュダンスを拒否。
プリュダンスは怒って去っていく。
想いに沈むアルマンのもとに、黒いドレスとヴェールのマルグリットが現れる。
「これ以上私を傷つけないで」と哀願するマルグリット。
やがて二人は激情にかられ激しく求め合う。
ショパンの情熱的な旋律にのせたドラマティックな振付が圧巻。
二人の踊りに、迸る情熱が絡み合い、心揺さぶられる。
熱にうかされたようなパ・ド・ドゥが終わり、抱き合いながら床に寝そべる二人。
夢うつつのマルグリットはマノンの幻影を見る。
夢の中のマノンは、マルグリットが娼婦であることを思い出させる。
(ここでのデ・グリュー、バカ殿メイクは少し薄くなっていたみたい、良かった(^_^;)
目覚めたマルグリットは、娼婦である自分はアルマンとは一緒にいられないことを悟り、一人静かに去る。

場面は一転して、舞踏会場へ。
黒のシックなドレスとタキシードの男女が踊る。
アルマンは、プリュダンスをエスコートして踊る。
ガストンもオランプと共に踊る。
そこへ、パトロンの公爵と共にマルグリットが現れる。
アルマンは無理やりマルグリットを引き離し、マルグリットを手荒に扱う。
マルグリットが再び自分のもとを去ったことに怒っている。
アルマンは、マルグリットに封筒を手渡す。
マルグリットが隅で封筒を開けようとすると、プリュダンスが覗きにくるので、彼女の頬を叩く。
叩かれたプリュダンスは、アルマンに慰めを求めるが、アルマンは不機嫌なままプリュダンスを押しやる。
マルグリットが封筒を開けると、札束が入っている。
あの晩の二人の関係を売春として扱い、お金を渡されたことに激しく傷つくマルグリット。
いたたまれず会場を飛び出してゆく。
アルマンもまたやりきれない思いを抱えている。
愛し合いながらもうまくいかないのが男と女。

胸の病いが悪化したマルグリットは、自宅のベッドで日記をつける。
舞台脇では、マルグリットの日記を読む現在のアルマンの姿がある。
もう一度、生きている間にもう一目だけ、アルマンに会いたくて、赤いドレスに着替えて劇場へ行こうとするマルグリット。
鏡を見ると、病んで顔色の悪い自分に愕然とし、マルグリットは真っ赤な頬紅を懸命に塗る。おてもやんみたいな滑稽さがかえって憐れすぎて、胸締め付けられる。
アルマンと一緒で一番幸せだったときのように、溌剌とした姿で愛する人に一目会いたいという切ない女心に涙が溢れた。
特に、劇場で具合が悪く、人々の間で肩をがっくり落として座る弱々しいシアラヴォラには涙が止まらなかった。白い椿を落としてしまい、N伯爵が拾って渡そうとしても、受け取れないほど衰弱しきったシアラヴォラ/マルグリット。痛々しすぎる。

アルマンに会えないまま自宅に戻り、衰弱しきったマルグリットは死を覚悟する。
再びマノンの幻影が現れる。沼地で命尽きようとするマノンとデ・グリューのパ・ド・ドゥ。デ・グリューの腕の中で息絶えるマノン。その間に体を必死に滑り込ませるマルグリット。
せめて最後は愛する者の腕の中で息絶えたいというマルグリットの壮絶な思いが表れているようだ。だが、悲しいかな、その願いは届かない。
自分の日記をナニーナに託し、マルグリットはアルマンを想いながら一人床に倒れて息絶える。
日記を読み終えたマチュー/アルマンの打ちひしがれた表情が、さらに涙を誘った。

マノンを絡ませながら、マルグリットとアルマンの愛の悲劇を描くノイマイヤーの「椿姫」。物語に打たれるのは、ただ美しいから、ただ可哀相だからというのではない。たとえ舞台という虚構の世界であっても、現実の私たち人間と同じヒューマン・ドラマがそこに存在するからだと思う。
そして、そのマルグリットを演じられるのは、やはり人生経験を積んで人間として成熟したダンサーのみ可能なのだと思う。良い意味での「枯れ」感が必要なのだと思う。
その意味において、女性ダンサーが、ダンサー人生の最後に演じるにふさわしい役だと思う。
ノイマイヤーの椿姫は、ショパンの曲と振付を見事に融合させ、そこに深い人間心理を描き出した傑作。ユルゲン・ローゼの繊細で優美な舞台美術と共に忘れがたい舞台となった。

あ〜、長いブログだった。ここまで書くのに何週間かかったんだろ(-_-)
posted by ひつじ at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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