2013年10月15日

美術展紀行〜竹内栖鳳展〜

「竹内栖鳳展」
2013年9月3日〜10月14日/東京国立近代美術館

会期が終わる直前に急いで行ってきました。
二年ほど前も、竹内栖鳳展をやっていましたが見に行けず、今回こそはと思い。
今回は、図録を買わなかったし、ポストカードもほとんどなかったので、画像はほとんど載せられません。
行っていない人は、文章から想像してください(^_^;)


○「枯野狐」
ササッと描いた枯草に、緻密に描かれた狐がいます。
物音におびえたのか、振り向く狐の一瞬の姿を捉えています。
筆で掃いたような背景の描き方と毛の一本一本まで細かに描く狐の描き方のコントラストが絶妙。

○「松虎」
二頭の虎が蔦の絡まる松林にいます。一頭の虎は水を飲み、もう一頭の虎は、木にとまった小鳥を見ているようです。獣のしなやかさを感じる作品。

○「雪中噪雀図」
雪の中で戯れる雀たちが可愛い。日本画の美しさの一つである「余白の美」がある。構図も上手い。

○「金獅」
DSCN6748 (640x480).jpg
美術展のチラシにも載っていた作品。
後ろ足を舐める獅子。フサフサした鬣に百獣の王の威厳を感じます。
「動物の匂いまで描く」と言われた栖鳳らしい。ライオンの息まで感じそうです。

○「河畔群鷺」
金屏風に墨で掃いたように描いた木の枝に、白鷺が二羽止まっています。一羽は羽根を閉じ、もう一羽は羽根を広げている図。もう一隻にも白鷺が枝に止まっています。
ここでも、筆で掃いたような大胆な木の描き方と生き生きとした白鷺の描写のコントラストが見事。

○ベニスの月
栖鳳は、36才のとき、パリ万博の視察のために渡欧し、フランス、ドイツ、オランダ、イギリス、イタリア各地を巡り、多くの西洋画に触れました。
パリでは、ラファエル・コランにも会っています。
帰国後、西洋画に影響を受けながら、新しい日本画の道を実践していきます。
ここでは、ベニスの光景を西洋的遠近法を使って墨で描いています。
外国の景色を掛け軸にするというのも、面白い試み。
運河に浮かぶベニスの建物。丸いドームを抱いたサン・マルコ寺院が亡羊と浮かび上がっています。雲間から月が覗き、運河には船頭とゴンドラがシルエットになっています。
西洋の景色を幽玄の世界で描いた作品。

○「喜雀図」
六曲一双の屏風絵。全体が輝く金地で豪華であるにもかかわらず、描かれているのは小さな雀のみ。
右隻には、三羽の雀が飛んでいますが、ちょうどパラパラマンガのように、あたかもだんだん地上に降りていくように、一羽一羽がコマ割りのように描かれています。
左隻には、チュンチュン鳴いている雀が三羽。地面を歩く二羽。一羽は正面を向いて立っています。この雀の愛らしさに、思わずこの金屏風が欲しくなりました(^_^;)
常設展に、菱田春草の雀の絵もありましたが、栖鳳の雀の描き方は全く違う。
顔や胴体は雀の特徴を細かく描きながらも、動いている翼の羽根は、一枚を一筆でサッと流して描き、躍動感を出しています。
栖鳳は、動物を描かせたら第一人者と言えるのではないかと思います。

○蹴合
DSCN6745 (640x480).jpg
二羽の軍鶏が荒々しく闘う姿を描いています。一羽は飛び上がり今にも跳びかかる寸前。もう一羽は身を低くして構えています。
軍鶏の殺気立った顔に、羽根の躍動感が見事な作品。

○班猫
DSCN6746 (640x480).jpg
山種美術館のチラシで見て以来、一目で虜になった作品。
毛づくろいをしている斑の猫が、一瞬こちらに気づいて見上げる瞬間を描いています。
しなやかにくねる身は、まるでしなをつくる見返り美人のよう。
そして、こちらを見上げる美しい緑色の目は、あたかも透明度の高い池のように、観者を吸い寄せる力があります。
猫なのに、まるで美しい妖女に見つめられたかのように、この絵の前で動けなくなってしまう、そういう魅力をこの絵は持っているのです。
緻密に描かれた毛並みは、思わず撫でたくなるような柔らかさ。
でも、手を伸ばせば、瞬時に逃げ去りそうな猫の俊敏さまで感じさせます。
構図も素晴らしく、猫一匹だけ描かれた空間。しかし、金泥を使って地面を表し、その濃淡で奥行を出しています。
栖鳳は、旅先の八百屋でこの猫を見つけ、あまり気に入ったので、自宅に連れ帰って写生したといいます。そして、この絵を描き上げた後、猫はどこかへ姿を消してしまったそうです。
どこかからひょっこり、こんな斑猫が現れるかもしれません。

他にも、東本願寺の天井画のための天女の下絵や裸婦モデルのスケッチ、それに中国へ行ったときに見た庶民の生活の絵などもありましたが、栖鳳はやはり動物を描くのが一番上手いと思いました。画家にはそれぞれ得意分野があるのでしょう。
栖鳳は、自宅に沢山の動物を飼っていて、常に写生していました。その数々のスケッチから生き生きした動物画が生まれたのでしょう。
「西の栖鳳、東の大観」と言われた近代絵画の巨匠。個人的には、圧倒的に「西」に軍配を上げてしまいます。
上村松園や榊原紫峰の師匠であり、日本の近代絵画を担う画家たちを育てた竹内栖鳳。
掛け軸の中で、また屏風の中で、彼の描く動物たちは命を与えられ、百年たっても生き生きとした生命感に溢れています。
posted by ひつじ at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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