2013年05月31日

バレエ末席物語〜「マラーホフの贈り物ファイナル!」Bプログラム

≪マラーホフの贈り物 ファイナル!≫Bプログラム
2013年5月26日

ついにこの日が来てしまいました。「マラーホフの贈り物」ファイナル。



●「シンデレラ」
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

ホフ版シンデレラは初見。
ダンサー・マラーホフは好きだけれど、振付家としてはどうなんでしょ。
けっこう退屈な踊り。(失礼)
友人から、マラーホフの体型が去年のバレエ・フェスとあまり変わっていない(痩せていない)という話を聞いていたので、心の準備はできていましたが、やっぱり・・・(T_T)
素朴な疑問:王子衣装はなぜ袖なし?(^_^;)
サレンコは地味ながらきちんと踊っていました。マラーホフはひたすらサポートのみ。

●「椿姫」第1幕
マリア・アイシュバルト、マライン・ラドメーカー

一人登場したアイシュバルト/マルグリットは、祈るように手を組んで長いこと立ち尽くしていました。いつ踊りが始まるのだろう思うほど長い沈黙。
この長い「間」が、会場の空気をシンデレラの幸福感から椿姫の世界へ一変させていました。「踊らない」ことで、空気を変える。アイシュバルト、すごすぎ。
一人佇むアイシュバルトは哀切な表情。恐れ、不安、苦しみを感じさせます。
やがて鏡を覗きこみ、自分の姿を見る。紫のドレスが大人の魅力を醸しだしつつも、もはや若い女性ではない自分の姿。
急に咳こむマルグリット。
そこへ、マライン/アルマン登場。
アイシュバルトは、先ほどまでの表情を一変させ、純粋な若者を弄ぶような魔性の女の表情でアルマンを誘います。その誘いに喜び、足元にひれ伏すアルマン。ウブな青年の若い情熱が溢れています。
どんなに魔性の女を演じてみせても、最初のシーンのマルグリットを観てしまった観客は、娼婦マルグリットの中の不安や恐れを思わずにはいられない。
自分が娼婦であること、にもかかわらず、若い青年へ心が動かされていく不安、やがては年をとっていく自分からアルマンの若い情熱がさめることへの恐れ、その前に自分を蝕む病魔が自分とアルマンを引き裂くことへの恐れ、それらを一人胸に隠し、魔性の女を演じるマルグリット。その姿に胸しめつけられる。アイシュバルトのマルグリットは、ガラ一幕でもすでに一つの物語として成り立っていました。
アイシュバルト、踊りはもちろん安定感があり、軽やかさもあり、テクニック的にも好調でした。情感が踊りに込められているのが何より素晴らしい。
ドラマティック・バレエを踊らせたら、彼女の右に出るダンサーは今の世にはいないと思う。
マラインも年齢差からしてもアルマンに合っているし、長い脚がこれまた綺麗。特に足の甲のしなりがとても綺麗。
サポートも上手いし、アイシュバルトとのパートナーリンクも合っていて、演技も自然。
マラインは若手と組むより、アイシュバルトと組み続けたほうが得るものが大きいと思う。
本当に胸打つ椿姫で、次回のシュツットガルト公演には是非是非、「椿姫」全幕を入れてほしいと思いました。(もちろん、アイシュバルト&マラインペアで!)

●「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

スミルノワもチュージンも名前と写真しか知らず、今回が初見。
チュージンは去年ゲスト・プリンシパルで来日していましたが、見に行かなかったので。
チュージン、なで肩で背が高くほっそりしているので、王子に似合いそう。
サポートもエレガントにこなしていて問題なし。
スミルノワ、化粧がかなり濃いけれど、踊りはしっかりしていたと思います。
若干、右の膝が弱い?と思うのは気のせい?
ダイヤモンドのキラキラ感と共に二人の若さが光る踊りでした。

●「レ・ブルジョワ」
ディヌ・タマズラカル

以前、シムキンでも観た演目。
タマズラカルは、跳躍系・テクニック系ダンサーなので、ハマるだろうとの予想通り。
3連続トゥール・ド・レンなど軽々とお手の物。
タバコをくわえたヤサグレ感も、シムキンより似合っていたかも。

●「ライト・レイン」
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

ラカッラのライト・レイン再び。ラカッラのためにあるとしか思えない作品。
二重関節を持っているのか、開脚は180度以上。ラカッラの体の柔らかさがいかんなく発揮されています。すごすぎる〜。
ディノは初見ですが、ひたすらラカッラの体をぐにょぐにょ曲げたり開いたりしているだけ(^_^;)
前に見たときは、ピエ〜ルだったけどね・・・。
ラカッラの変わらない体の柔らかさを堪能できて眼福でした♪

●「バレエ・インペリアル」
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

この演目は、以前、ヴィシニョーワ&マラーホフで見ました。
今回は、水香ちゃんが怪我で降板し、代役はサレンコ。
1幕、2幕、3幕と活躍しまくりのサレンコ。今回はサレンコ祭り?(^_^;)
ストーリー性のない作品のはずなのに、なぜかマラーホフ王子はいつももの淋し気な表情をしています。ジークフリートみたい?ラストは笑顔になるのですが。マラーホフなりの役作りなのかな。
サレンコ、きちんと踊れていて問題はないけれど、その地味さゆえあまりインパクトが残せないのが、彼女の可哀相なところ。でも、そのひたむきさは好感が持てるし、今回の公演が無事終わったのも、サレンコが頑張ってしっかり踊ってくれたおかげ。
東バのコール・ド、縦横ラインも回転やジャンプもよく揃っていました。さすがレベルが高いですね。コール・ドがこのくらいのレベルでないと、この作品はただ退屈なだけ。
先日、TVで放送していた「NHKバレエの饗宴」を見たせいか、パ・ド・トロワでは、春祭の生贄役だった宮本さんに目がいってしまいました(^_^;)生贄役が似合いすぎだった宮本さんが、溌剌とした笑顔で踊っていたのが嬉しい。ホッとした。
メインの女性役の奈良さんもしっかり踊っていました。
綺麗という以外、取り柄のない退屈な演目ですが、ラストのコール・ド+主役二人の群舞は華やかで見ごたえがありました。

●「ロミオとジュリエット」第1幕
マリア・アイシュバルト、マライン・ラドメーカー

この二人の「バルコニー」は、バレエ・フェスに次いで二度目。
アイシュバルトは、先程のマルグリットから一変して可憐なジュリエット。
バルコニーに出て星空を眺め、ロミオを想う初々しい少女です。
そこへ、マライン/ロミオが赤いマントを翻して登場。
赤いマントって、なんだか闘牛士みたいだけれど、ジュリエットの衣装の赤いリボンと重なって、二人の情熱を表しているのかな。
クランコ版は、ジュリエットが階段を駆け下りロミオのもとへ走るのではなく、階段の踊り場にちょこんと座ったジュリエットをロミオが抱え上げる振付。
クランコ版は、ラストのジュリエットとロミオがバルコニーでお互い手を伸ばし、別れを惜しむシーンがないので、あっさり終わってしまうのが残念ですが。
流れるように軽やかなリフトや不安のないダイブなど二人の息が合っていて、とても良かったです。

●「タランテラ」
ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

2幕であれだけ踊った後に、アップテンポのこの作品を踊るのは大丈夫かと思いましたが、サレンコ、疲れも見せず、しっかり、そして、楽しそうに踊っていました。
タマズラカル、足技もジャンプも元気よく、彼の個性にぴったり。
サレンコがピルエットしながら舞台をまっすぐに進むとき、タマズラカルが応援するように、めちゃめちゃタンバリンを叩いていたのが面白かった。
タランテラは踊る方は大変だけれど、観る側にはとても楽しい演目。
大変ながらも、二人がとても楽しそうに踊っているのを見て、こちらも自然と笑顔になりました。このペア、この演目を最後に持ってきて正解。
観客も盛り上がっていました。

●「椿姫」第2幕
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

今回は、違うペアで「椿姫」の1幕と2幕。
ガラで「椿姫」というと3幕が踊られることが多いですが。
以前、ルグリ・ガラでアバニャートとペッシュで見ましたが、タイミングが合わないのかリフトがとても重そうで、アバニャートのスカートが顔にかかるたびにペッシュが手で払いのけていて、パ・ド・ドゥの美しさは感じられませんでした。
去年のフェスBプロでもアニエスが踊っていたかな?私はTVで観ただけですが。
ラカッラはさすがに軽くふんわり踊っていました。リフトのとき、ディノの顔にスカートがかからないよう気遣いもしていました。
ディノがどういうダンサーなのか、この二つの作品では良くわかりませんでした。
ま、ラカッラを引き立てていれば、それで良いんですけど。
2幕のパ・ド・ドゥは確かに愛し合う二人の幸せなひとときではあるのですが、この二人からは、ただの「幸せいっぱいのカップル」以上のものは感じられませんでした。
シュツットガルト組を観なければ良かったのでしょうが。

●「白鳥の湖」“黒鳥のパ・ド・ドゥ
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

チュージン、マネージュでは舞台を大きく使っていて見ごたえあり。サポートもエレガント。王子に似合います。サポートでは、女性のピルエットを支えるとき、へっぴり腰になるダンサーもいるけれど、チュージンは綺麗にサポートしていました。足のポジションも綺麗。
スミルノワ、化粧が派手なのでキツイ印象に見えるけれど、オディールなら合っているかも。グラン・フェッテはかなり直線移動の正統派シングル・フェッテ。
将来性のある若手ペアでした。

●「ヴォヤージュ」
ウラジーミル・マラーホフ

何度、この作品を踊るマラーホフを観たことでしょう。
白ズボンに白ジャケットのマラーホフ。丸みを帯びた体にこの衣装はちょっとキツかったかも。ベルトの上にお腹の肉が・・・(T_T)
禁煙したせいで体重が増えたという噂もありますが、去年からの精神的打撃のせいもあるのかもしれません。秘蔵っ子ポリーナの突然の退団やベルリン芸術監督を辞任させられたショックと傷。孤高のダンサー、マラーホフの流離いの旅は終わりません。
これほどの才能に恵まれつつも、人生は順風満帆にはいかないものなのですね。
そんなマラーホフの人生の旅立ちそのものの作品。
観客に向けるように手を振るマラーホフ。今までの自分への別れと、彼の舞台を愛し続けた観客への別れ。マラーホフが切なすぎて、感極まってしまいました。
マラーホフこそ、我がバレエ黄金期の最高の男性ダンサー。
逞しさやダイナミックさで魅了する、それまでの男性ダンサーとは違い、繊細で情感豊かな踊りで魅了する稀有の男性ダンサーなのです。
マラーホフ独特の、猫のようにしなやかで伸びやかな消音ジュテ、柔らかく反る背中、繊細な手先の表現、美しすぎる足、そのどれもが「美」でした。
どんな役でも、たとえ、村娘を弄ぶアルブレヒトでも、目先の欲にくらんで恋人を裏切るソロルでも、彼の紡ぎだす世界は愛と優しさに満ち、決して憎めないキャラクターでした。それこそが、彼自身のキャラクターであり、多くのファンから深く愛され続ける所以なのだと思います。
フィナーレで「18年間ありがとう」の垂れ幕が下りたとき、今まで20年以上に亘って観つづけてきた数々のシーンが脳裏によぎり、泣くつもりもなかったのに、勝手に涙が溢れてしまいました。今思えば、マラーホフの全幕は「チャイコフスキー」が最後になってしまったのかもしれません。彼の「カラヴァッジョ」全幕が観たかったけれど、日本では上演されなかったのが残念。
また日本で踊りを披露してくれることを期待しますが、全幕主演は難しいのでは…とも思います。
現実は現実として受け止めなくてはならないのです。
どんなに才能あるダンサーも、やがて舞台人生にピリオドをうつ日がくるのです。
それは、長年観つづけたファンの一人として、とても淋しい。
特に、我がバレエ黄金期を支えたダンサーへの思い入れは一入。
自分の人生の一部が終わってしまうかのような淋しさです。
カテコなので、思い切ってスタオベすると、隣もその隣も、後ろの観客も次々スタオベしていました。
そんな観客に応えるように、マラーホフは、あのジュテを二度も披露してくれました。
20年以上、世界のトップで踊り続け、数々の感動を与えてくれた彼の踊り、その輝きは決して忘れない。
マイ・ベスト・アルブレヒト。マイ・ベスト王子。そして、マイ・ベスト・ファニー・ガラ。
バレエ・ファンとしてのマラーホフへの愛はこの先も決して変わりません。
ありがとう、そして、Bravo Malakhov!!
posted by ひつじ at 15:09| Comment(2) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ひつじさん こんにちは^^
マラーホフ、もう引退なんですね?!
以前にもコメントさせていただいたプリセツカヤのガラに若いマラーホフが舞台に立っていました
プリセツカヤは「瀕死の白鳥」、マラーホフはアルブレヒト(二幕)を踊っていました。
他の内容はすべて忘れてるのに、この二つはたぶん生涯忘れないでしょう
マラーホフの踊りを観て、真に「ノーブル」 とはどういうことか見せつけられました。
ダンサーのカリスマで魅せるのではなく、ただ愚かで憎めない哀しい青年貴族がソコにいました。
…ほんとに残念ですね

ミュシャの記事でコメントしようと思ってたら、遅くなりました(;^_^A
ミュシャ館のある堺市の近くに住んでいて、一度ミュシャを直に観たことがあるのですが、
またまた行きたくなりました^^
あっ、「貴婦人と一角獣」も^^
Posted by エル at 2013年06月03日 15:15
エルさん、こんにちは!
コメントありがとうございます♪

私の書き方が悪かったのですが、「マラーホフの贈り物」公演が最後というだけで、まだダンサー「引退」ではないです。
でも、私のブログは、そう思われるような書き方ですね(^_^;)
(私の中で、一つの区切りをつけなくてはならなかったので)
アルブレヒトは無理でも、また違った形で彼の世界を披露してくれるかもしれません。

エルさん、プリセツカヤの「瀕死」を観たのは貴重ですね。
昨今のバレエ・ファンでは観られない名演ですから。
プリセツカヤももう来日は難しいでしょう。

ミュシャ館というのがあるんですね。
行ってみたいです〜〜。
「貴婦人と一角獣」も行きたかったのですが、金欠のためおそらく諦め・・・(T_T)
この間、図書館で、まさにそのタイトル「貴婦人と一角獣」という本を見つけました。表紙もまさにあの絵。
「真珠の耳飾りの少女」を小説化したトレーシー・シュバリエという作家が書いています。
あの絵にちなんだ小説みたいですヨ。
ちょっと興味をそそられました。
エルさんもいかがですかー?(^^)
Posted by ひつじ at 2013年06月03日 22:03
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