2013年01月24日

バレエ末席物語〜「ベジャール・ガラ」〜

「ベジャール・ガラ」
2013年1月19日

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今年のバレエ初めは、小林十市さんの一日限りの復活公演。
NBSさんもやるな〜と思います。ひつじを釣るなら十市公演(^_^;)



○「ドン・ジョヴァンニ」
ヴァリエーション1:川島麻実子、河谷まりあ、沖香菜子
ヴァリエーション2:阪井麻美
ヴァリエーション3:高木綾、岸本夏未
ヴァリエーション4:西村真由美
ヴァリエーション5:奈良春夏
ヴァリエーション6:上野水香
シルフィード:吉川留衣

仕事を早退してダッシュで上野に駆け込んだので、この演目はお休みタイムにすることに(^_^;)失礼!
この演目、何回目かな〜。しかも、退屈。
レオタード姿の可愛いバレリーナたちが憧れのイケメン「ドン・ジョヴァンニ」(スポットライトで表された透明人間(^_^;)なので姿は見えず)の気を引こうとヴァリエーションを踊ります。
バレエの基本のパを次々踊ってくのですが、オペラグラスをはずして流し見。
水香ちゃんは体型が別格なので、オペラグラスをはずしていてもすぐわかる。
グラン・バットマンの位置が無理なく高かったです。
ナゾ・キャラ、吉川さん/シルフィードは、なかなかシルフィードらしかったけれど、左腕がやや硬い気が。シルフィードは「悪戯な恋」の象徴とかなのかしらん。謎。
バレリーナたちが躍起になって気を引こうと試みるも、ドン・ジョヴァンニの正体は梯子を担いだ人夫(?)。がっくりうなだれるバレリーナたち。そして暗転。
まぁ、ちょうど良い休憩タイムでした。

○ 「中国の不思議な役人」
無頼漢の首領・・・後藤 晴雄
娘・・・小笠原 亮
ジークフリート・・・柄本 弾
若い男・・・西村 真由美
中国の役人・・・小林 十市
ほか 東京バレエ団

「中国の不思議な役人」は、2009年の「ベジャール・ガラ」で見ました。
今回の役人は、十市さん。爽やかな十市さんがあの欲望満ち満ちている役人をどう演じるのか、観る前はやや疑問もありました。

始まりの男性群舞は迫力。
ボスは、今回も後藤さん。リーゼントっぽく髪を上げ、ダークスーツの後藤さんは、かなりワル(^_^;)
娘役も、前回同様、小笠原さん。小笠原さんは顔がほっそりしていて化粧が似合うので、ホントにこれは当たり役。観客としては、小笠原さんが当たり役だと思うけれど、本人は「娘役が当たり役」と言われるのはどんな気分なんだろう?(^_^;)
小笠原さん、役にとても入り込んでいて、手の仕草や流し目などすっかりオカマ(^_^;)
娘役、さらにパワーアップした?なんとなくファニー・ガラを思い出してしまいました(^_^;)女性ダンサー並みに脚もよく上げて頑張っていました。

フシギ・キャラ「ジークフリート」は、柄本弟くん。原始人のような出で立ちは、やはり人間の本能の象徴でいいのでしょうかね?

群舞が踊り、暗い中、スポットライトが当たると、十市さん/役人がそこに立っている。
掌を震わせたり、キツネの影絵のような手の仕草は、役人の奇妙さ満載。
前回の木村さん/役人は、終始無表情で、機械のように無感情のまま、娘に固執していく様子が不気味でした。役人は、そういう役だと解釈していたのですが、十市さん/役人は全く違った。まるで別物の舞台、全く別の作品を観ている感じでした。
初めは娘に興味などない様子の十市さん/役人、ボスに言われた娘が役人に言い寄っていくと、次第に娘を支配する欲望に目覚めていく表情に変わっていきました。鬼気迫る表情で娘に飛びかかろうとする十市さん/役人をボスが引き剥がし、小笠原さん/娘は不気味な役人をナイフで刺す。息絶えたかのように見える役人ですが、ゾンビのように起き上がる。偏執的な欲望のみに突き動かされている役人。
無頼漢達に捕えられ、役人は長いロープで首を締め上げられますが、苦しみ悶えながらも死なない。自らの欲望を満たすまでは。激しい欲望を爆発させる十市さん/役人は、今まで見たことがないほどの迫力でした。こんなに表情を出す十市さんは初めてです。役者として培われた演技力が踊りの舞台でも表されているのだと感じました。

十市さんの踊りは、決して贔屓目ではありませんが、非常にしなやかで軽やかでした。ジャンプしても着地は他のどのダンサーより静かだし、足先、足の甲が別格に美しい。本当にバレエを離れていた人の踊りとは思えません。毎日レッスンしているダンサーよりも踊りが綺麗とは!(←十分、贔屓目だよ(^_^;)
それから、十市さんを見て感じたのは、他の男性ダンサーと筋肉の付き方が違うようだということ。男性の筋肉はトレーニングすればするほど硬くなるようですが、十市さんの筋肉は男性特有の硬さが感じられないのです。非常にしなやかで女性的(?)な筋肉。これは生まれも持ったものによるのでしょう。

小笠原さん/娘は、役人の欲望を自分から遠ざけようと、他の娼婦たちを使って色仕掛けをしかけます。女性ダンサーたちの黒いセクシー下着の衣装は毎回、ドキドキさせられます。いくら振付とはいえ、黒い下着のまま、観客側に両脚開脚はかなりきわどい。もし、私が親だったら、娘にクラシック・バレエを習わせた挙句この衣装でこのポーズはきっと泣くだろうな(^_^;)
でも、セクシー下着で十市さん/役人にお触りできるのは、ちょっと羨ましい(←ヘンタイ(^_^;)

娼婦たちの色仕掛も、役人の娘への執着を止めることはできず、役人は、娘が投げつけた金髪のカツラの上で、自らの欲望を満たしてようやく果てる。
暗黒街に渦巻く暴力と性欲と支配欲。
人間の欲望の凄まじさをえぐり出すブラックな世界。
でも、それが綺麗ごとでは語りきれない人間というものなのでしょう。

「燃え尽きる覚悟でこの一日に挑む」と十市さんが語っていた通り、出し切れる全てのものを出し切った舞台でした。
あまり激しすぎて怪我をしたのか、カテコのとき、十市さんの下唇に血が出ていたようです。
小笠原さん/娘とキスしたときの口紅?ではないでしょう。
それとも、まさか下着ダンサーたちに興奮して鼻血が出た?(^_^;)
いや、十市さんに限ってそれはありえません。

蒸気した顔で泣きそうな表情のカテコの十市さんを見て、私も感極まって泣きそうでした。日本での最後の踊り。十市さんがベジャール・バレエで学んだ全て、役者として学んだ全てを出し切った舞台。
この舞台を観て、決して贔屓目ではありませんが(←贔屓目だって(^_^;)、小林 十市というダンサーは天与の才と器を持った真のダンサーなのだと改めて感じました。
踊っていないときの十市さんは、ちょっと子供っぽくてアホっぽい(失礼!)なところもあるけれど、他の人が努力と鍛錬を積んでさえも到達できないような「宇宙」を生まれながらにして持っているダンサーだと感じるのです。
本人がそれに気づいているのかいないのかわかりませんが、とてつもない「宇宙」と「器」を持った類稀なダンサーなのだと思います。
腰の調子のせいで、ダンサーとしての活躍期間が短かったのは惜しまれますが、今回の舞台では十二分にダンサー・小林 十市を堪能させてもらいました。

○「火の鳥」
火の鳥・・・木村 和夫
フェニックス・・・柄本 弾
パルチザン・・・乾 友子、奈良 春夏、川島 麻実子
        氷室 友、宮本 祐宜、梅澤 紘貴、岡崎 隼也、吉田 蓮

この演目は初見。なのに、木村さんのラスト火の鳥(T_T)
木村さん、2回ほどジャンプの後、座る姿勢の着地で床に手をついていました。あれって振付じゃないですよね?でも、あの姿勢の着地はバランスをとるのが難しいので仕方ないですね。それにクラシックではないから、踊りの流れにも影響はないし。木村さんの気合いの入り具合が感じられます。
女性パルチザンの奈良さんが恰好よかった。
宮本さんや梅ちゃん(失礼、梅澤さん)のソロも良かったです。
弾くん/フェニックスも木村さんのリフトなど頑張っていました。
パルチザンと聞くと、『イタリア・ユダヤ人の風景』(河島 英昭・著)で読んだラゼッラ街の襲撃事件を連想してしまう。
ムッソリーニ政権下、イタリア・パルチザンがドイツ軍SS部隊を襲撃するのですが、その報復として、ヒットラーは殺されたドイツ兵1人につき10人のイタリア人を銃殺するよう命じ、翌日ユダヤ人やパルチザンなどイタリア人が300人以上銃殺されるという惨劇が起こるのです。
本で読んだだけですが、ラゼッラ街の地図や実際のパルチザンの行動図などが描いてあって、頭の中でなかなか生々しい映像になって残っています。
現代の日本からは想像もできない緊迫した状況を思い描きながら、パルチザン・ダンサーの踊りを見ていました。

バレエのほうは、木村さんがパルチザンのリーダーとして反旗を翻しながらも倒れ、倒れてもなお、火の鳥となって命の火を仲間に託す。
仲間に命を与え尽くした火の鳥は命果てる。
が、不死鳥が表れ、火の鳥を復活させる。
木村さん/火の鳥と弾くん/フェニックスが一体となったようなラストシーンは壮観でした。ラストの木村さん/火の鳥の清々しい笑顔は、未来へつながる希望を表しているかのようです。
カテコでも、満面笑みの木村さん。これほど満面笑みの木村さんを見るのも初めてかも(^_^;)あの清々しい笑顔に心が明るくなるようでした。
これが木村さんのラスト火の鳥だと思うと残念。
ベジャールが意識したわけではないでしょうが、背景の太陽が日本の国旗・日の丸のようで、まさに木村さんが語ったように、東日本大震災の復興への祈りが感じられるようでした。
この公演のトリにふさわしい作品。
一日限りの復活を果たした十市さんの泣きそうな顔、ラスト火の鳥を踊りきった木村さんの清々しい笑顔。どちらも印象的で、踊りからこの一年を乗り切るパワーと元気をもらえた公演でした。

posted by ひつじ at 14:04| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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