2018年07月14日

Across the Thames〜テムズ川をこえて〜

隠れる間もなく、神父が現われた。
見つかった。
いや、よく見ると追手の神父ではなかった。
「君たち、ここで何している」
神父は厳しい顔で怪訝そうに僕達を見つめた。
僕は必死で頭を巡らした。時代錯誤な彼女のドレス。僕の燕尾服。
「神父様、どうか見逃してください」
僕はとっさに口にした。
「見逃す?」
神父はますます怪訝そうだ。
「はい、姉は・・・好きでもない相手と無理やり結婚させられそうになって、たった今結婚式から逃げ出してきたんです。その悪い男から逃れるために、ここに身を隠していたんです」
とっさに出た言い訳に我ながら驚いた。
神父は、僕とジェーンの顔を交互に見ながら「ふむ」と言った。
「しかし、一時的に逃れてもこれからどうする気だね。親御さんも心配して探していることだろう」
神父はそう言いながらも、僕達のことより、この教会が厄介なことに巻き込まれたくない様子だ。
「この教会にはご迷惑をかけません。これから、姉の恋人のところへ行くのです」
「ほほう、駆け落ちかね」
神父は、世俗には興味がないといったすました顔を取り繕いながら、好奇の目をジェーンに向けた。僕はその視線を遮るように、神父とジェーンの間に身を乗り出した。
「神父様、神様の前で愛を誓うのは真実の愛でなくてはならないですよね?偽りの愛を誓うのは神への冒涜ではありませんか」
僕の言葉に神父は笑い出した。
「こんな坊やが愛を語るとは」
棘のある言葉に僕は赤面した。
「弟は、私を必死で守ろうとしてくれているのです。私を守ってくれるのは弟だけなのです」
ジェーンが僕をかばってくれた。ジェーンの言葉は、実際本心から出たもののようで、僕の胸を熱くした。
「いい弟さんをお持ちだ」
神父の厭味な言葉は続いた。
「だが、しかし、駆け落ちの手引きをした君は親御さんにこっぴどく怒られるだろうね」
「そんなことはどうでもいい」
僕はぶっきらぼうに言った。
「姉が幸せにさえなってくれれば。父母だって姉が幸せになってくれれば、きっといつか許してくれるはずです。僕は、姉に幸せになってもらいたいんです。そのためなら僕は何でもしたい」
もう神父に語るというより、僕はジェーンに語っていた。ジェーンに生きて欲しい。そのために、僕ができることは何でもしたい。
「お姉さん想いだな。まるで恋をしているようだ」
僕は、この神父から早く逃れたかった。
「早々に立ち去りますから、どうか見逃してください。神父様が僕達を見逃してくださったら、僕達もこの教会に立ち寄ったことは話しませんから」
神父はようやく納得した様子で
「では、今すぐここから立ち去りなさい」
と言った。
「ありがとうございます。慈悲深い神父様に神のご加護を」
うやうやしく言って、僕はジェーンの手を引いて小部屋を出た。廊下を歩いて出入り口へ向かおうとすると、そこからフェッケナム神父と執行人が飛び込んできた。すんでのところで柱の影に身を隠した。男達は僕達に気づかず柱を通り過ぎ、小部屋から出てきた神父を捕まえて何かを問いただしていた。神父は首を横に振っている。男達はそれでも、神父の制止を無視して会堂内を探し始めた。
「早く出よう」
ジェーンの手を引いて、小走りに走ろうとしたとのとき、
カラーン
会堂内に音が響いた。
ジェーンのドレスが間仕切りのポールにあたって、大理石の床に倒れたのだ。
動きが止まる。
振り返ると、フェッケナム神父がこちらに気づき、執行人の袖を引いているところだった。
「走れ!」
僕は叫んで、ジェーンの手を引いて走り出した。
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2018年07月10日

Across the Thames〜テムズ川をこえて〜

ひとまず落ち着ける。
「さっき君は政略結婚をさせられたと言っていたね」
先刻途切れた話を僕は続けた。
「ええ、私の曽祖父はヘンリー7世で・・・」
「ヘンリー7世?」
僕は耳を疑った。ヘンリー7世といえば、チューダー朝のイギリス国王だ。歴史の授業で習った記憶を辿った。
「ええ、母はヘンリー8世の妹の娘」
「ちょ、ちょっと待って。君の時代は今とは随分隔たりがあるんだ」
「え?」
「だって今は20世紀だもの」
「20世紀?」
今度は彼女が驚く番だった。
「そういえば、あなたの服は不思議な服ね」
彼女は、僕の燕尾のコートを肩から下ろして見た。
「ああ、これは燕尾服っていうんだ。イートン校の制服だよ。あ、イートンは君のいた時代にももうあったはずだけどね。ヘンリー6世によって1440年に創られた学校だから。もっとも、お姫様の君が知ってるかどうかわからないけど・・・」
「お姫様なんかではなかったわ。私はサフォーク公の娘としてふつうに育ったわ。あの腹黒いノーサンバーランド公が父母に近づくまでは・・・」
「そのノーサンバーランド公が君を政略結婚に?」
「ええ、彼の息子、ギルフォ−ド・ダッドリーとの結婚を取り決めさせたのよ。私には・・・想う人がいたのに・・・」
彼女の最後の言葉にチクンと胸が痛んだ。
「君は・・・好きな人と結婚できなかったんだね」
彼女は、積もりたての淡雪のような顔をうつむけてうなづいた。
「エドワードとは・・・結ばれなかったわ」
「エドワード?僕の名前もエドワードだよ。ああ、自己紹介が遅くなったけど、僕はエドワード・シーモア」
その言葉をきくと、彼女はうつむけていた顔をさっとあげ、少し高揚した表情で僕の手を取った。心臓がドキンと鳴る。
「エドワード・シーモア!私のハートフォード伯と同じ名前だわ」
「ハートフォード伯・・・。僕は・・・」
僕はあえぐように言った。
「ハートフォード家の長男だ」
あまりの偶然に、それ以上、言葉にならなかった。
時代を超えて、こんなところで出会えるなんて。いや、もちろん、彼女の想い人と僕は違うけど。でも、僕と同じ名前の僕の祖先だ。
「ああ、なんという偶然。あなたに助けられるなんて」
彼女は熱っぽい瞳で僕を見つめた。見つめられて、今度は僕がうつむく番だった。
「き・・・君の名前は?」
「ああ、ごめんなさい。私はジェーン、ジェーン・グレイよ。今は、ジェーン・ダッドリーだけど・・・」
「君はどうして意に沿わない結婚をさせられたの?」
「義父は、私の血脈を利用して、エドワード6世亡き後、私を女王に祭りあげるつもりだったの。私には、何が起こっているのかわからなかったわ。父母もそうだったと思う。
義父は、息子と私を結婚させ、私を即位させたわ。でも、義父の本当の狙いは、息子ギルフォードを王位につけること。そして、ゆくゆくはギルフォードと私の子供を王位につけることだったのね。私が即位すると、すぐに夫のギルフォードは自分を王にしてくれと頼んだのよ。私にそんなこと・・・。私は自分が女王になった自覚すらないのに・・・」
欲望と策略の渦巻く中で、彼女が翻弄されているのがわかりかけてきた。
「それで、どうして君は反逆罪なんかに・・・」
「王位継承権は、本当はエドワード6世の次に異母妹のメアリーにあったのよ。義父は、いまわの際のエドワード6世に詰め寄って、メアリーから王位継承権を剥奪してしまったの。ノーサンバーランド公の策略に反発した議会は、メアリーこそ正統な女王だと発表したの。
メアリーはそれを機に挙兵して、ロンドン塔に押し寄せてきたわ。私は、ロンドン塔に閉じこもったの。もう王位なんてどうでも良かった。私はただ故郷のブレイドゲートに帰りたかった・・・。ヒースの花咲く原野を昔のように妹達と馬に乗って駆け巡りたかっただけ。私は喜んで王位を返上したわ。ロンドン塔から故郷へ帰れるなら。
でも、メアリーは私がロンドン塔から出るのを許さなかった。女王として戴冠したロンドン塔に、今度は囚人として囚われの身となってしまったのよ。義父も反逆罪として投獄され・・・そして、処刑・・・。なんて恐ろしいこと!こんなことになるなんて。私はいつまで幽閉されたままでいるの?一生?ああ、でも、悲劇はそれで終わらなかったのよ。メアリーが即位してスペインの王子フェリペと結婚すると発表すると、国民は反発したわ。スペインはカトリックの国ですもの。メアリーもカトリック教徒。新教徒への弾圧を恐れて反乱が起こったわ。その反乱が国民だけのものだったら、私の運命も最悪の方向へ向かなかったかも・・・」
「どういうこと?」
「その反乱に父が関与していたのよ」
「そんな・・・」
「メアリーはもう私達を見逃すことはできなかった。父が捕まって処刑が決まったと知ったとき、私はもう生きていく力を失ったわ。ああ、お父様。お父様を失って、どうやって生きていけるでしょう」
ジェーンの肩が震えた。僕はそっとジェーンの肩を抱いた。
「メアリーに恩赦を乞うことはできないの?」
「ええ、メアリーはフェッケナム神父を私の元へ遣わして、カトリックに改宗するなら私のことは特赦すると伝えてきたわ。処刑から終身刑へ・・・。もう二度とブレイドゲートに戻ることはないの。昔のように自由に馬で野原を駆け巡ることも・・・。罪人として一生ロンドン塔から出ることもなく、いつメアリーの気がかわって処刑されるかわからない恐怖におびえながら・・・。もう・・・生きていないほうがいいの」
ジェーンの伏せた瞳から涙が零れ落ちた。長い睫毛が涙に濡れている。
彼女が負わされた荷はあまりに重い。僕に何ができるだろう。彼女のためにできることはいったい・・・。
だが、今の僕にできることは、ポケットを探ってハンカチを差し出すくらいだった。
ジェーンは涙に濡れた瞳をあげて僕を見た。朝露に濡れた白バラだ。
ふいに彼女の背後のカーテンが揺れ、
「そこにいるのは誰だね」
男の声が聞こえた。
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2018年07月07日

Across the Thames 〜テムズ川をこえて〜

とりあえず、僕は路地へ逃げ込んだ。走り続けで、心臓が飛び跳ねているようだ。とにかく少し休みたかった。それに、町中では僕の制服も、彼女のドレスも目立ちすぎる。
息が上がってしばらくはお互い口がきけなかった。僕は彼女がまだ目隠しをされたままでいるのに気づいた。
「ごめん、気づかなくて」
僕より少し背の高い彼女の顔に手を伸ばして、目隠しをはずした。目隠しと共に、束にされていた黄金の髪がほどけて肩に流れ落ちた。目を開けた彼女は、ブルーグレイの瞳でまっすぐ僕を見つめた。その曇りない澄んだ瞳に見つめられると、僕の心臓は早鐘のように打ち始めた。走っていたときより苦しい。全身の血が逆流しそうだ。いったい僕はどうなってしまったんだ。僕はその場に固まってしまった。
「助けてくださって感謝します。どうもありがとう」
彼女のほうが先に口を開いた。
「あ・・・いえ・・・」
僕はしどろもどろに答えた。なんて無様な。恥ずかしさで、顔が赤くなる。彼女に見られないよう顔をうつむけると、まだ彼女の手を握っていたのに気づいて、慌てて離した。
「き・・・君は、どうしてあんなところに・・・」
「私は反逆罪で処刑されるところだったの」
「は、反逆罪?そんな、信じられない。ありえないよ。君みたいな人に罪なんて」
僕の言葉に今度は彼女がうつむいた。
「私は・・・生きていてはいけないんだわ」
ブルーグレイの瞳が哀しげに曇った。
「嫌だ!」
僕はとっさに叫んでいた。
「え」
「僕は君が死ぬのなんて嫌だ。絶対嫌だ。だって、僕は君を・・・」
続いて出そうになる言葉を飲み込んだ。また心臓が早くなる。うつむいた視線の先に、彼女の左の薬指に指輪が光っていた。
「け・・・結婚してるの?」
前後の脈絡のないトンチンカンな質問だ。また自分が恥ずかしくなった。
「ええ、政略結婚だけど・・・」
「政略結婚?」
僕より年上だろうが、彼女だってまだ若い。結婚するには若すぎる。
「君は、結婚できる年齢なの?」
「16歳よ。結婚に年齢は関係ないわ。子供の頃に結婚相手を決められてしまうこともあるくらいですもの」
政略結婚、反逆罪・・・。彼女の背後には、何か抗いがたい運命が渦を巻いているように思えた。
「君は、きっと身分の高い人なんだね」
僕の言葉に答えようとする彼女を、僕はとっさに制した。
例の男達が、美術館から飛び出してきたのを見たからだ。狭い路地にいる僕らに気づかず、男達は二手に分かれた。
「どこか隠れる場所を探そう」
燕尾のコートを脱いで彼女の肩にかけた。
どこへ隠れよう?この格好で遠くへは無理だ。

ふと、トラファルガー広場の一角に教会があったのを思い出した。
美術館に入る前、先生が、ここが原野だった頃からあった教会だと言っていた教会だ。
通りを回ると高い尖塔を空へ伸ばしている教会が見えた。三角破風の下の玄関廊から中へそっと入り込んだ。コリント式の白い列柱が続き、浮き彫りの施された天井からはシャンデリアがぶらさがっている。礼拝時間ではないせいか人はそんなにいない。
数人が、光差し込むガラス窓のある祭壇に向かって、頭を垂れて祈っているだけだ。
僕は、脇の小部屋へ彼女を誘った。
posted by ひつじ at 18:24| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月01日

Across the Thames〜テムズ川をこえて〜

いや、違う。僕は、目をこすった。翼がない。
よく見ると、清らかな光に包まれたような白い肌の女性だった。
天使とまごう清らかさ。この世のものとは思われない美しさ。
美しい、と僕は思ったが、実際、彼女の顔は見えなかった。白い布で目隠しをされていたからだ。
目隠し?何故だ。
僕の目は、ようやく彼女を取り巻くものが見えてきた。
美しいその女性は、肌と同じように白いドレスに身を包み、僕の目の前で、司祭のような初老の男性に導かれるように手を取られ、台の上に身をかがめようとしている。
台?いったい何の・・・。
傍らに赤いタイツの男が立っていた。憐れそうに彼女を見下ろしながらも、その手にはキラリと光る斧を持っていた。
斧?いったいどういうことだ。
僕の目線よりやや上の壇上に黒い布が敷かれ、その上に藁が置かれ、そこに台がある。そこに今しも身をかがめようとしている乙女。あたかも殉教する聖女のようだ。
これは舞台で行われている芝居か?いや、違う。僕は自問自答した。
これは・・・絵だ。壁に掛けられた一枚の・・・。
いや、これが絵であるはずがない。僕はすぐにその考えを否定した。
生々しいほどの彼女の肌は本物だ。血の通った生身の人間だ。
彼女は手探りで台を探している。
ダメだ、それは斬首台だ。そんなところにいたら殺されてしまう。
僕はとっさに手を伸ばして、彼女の手をつかんだ。なめらかで柔らかい手だった。
「逃げるんだ!」
僕は叫ぶと、力づくで彼女を引っ張った。目隠しの彼女は、わけのわからぬまま、僕のほうへまろび出てきた。僕は彼女の手を摑んだまま走り出した。
チラと後ろを振り返ると、呆気にとられた神父と死刑執行人がこちらに顔を向け、慌てて追いかけようとしている。
「僕についてきて!」
僕の言葉に、彼女は走りながらうなづいた。彼女は僕に全てを委ねている。今、彼女を救えるのは僕しかいない。
館内の人ごみをかき分け必死に走った。人々が驚いて叫んだり、指をさしたりしている。
振り返ると、斧を持った執行人が恐ろしい形相になって追いかけてくる。神父がその後ろからよろめきながら走ってくる。
出口、出口はどこだ。
混乱した頭の中で、僕は必死に考えをめぐらした。
―正面入口とは反対側にもう一つ出入口が―
ふいにフレッドの言葉を思い出した。フレッドが指差した館内案内図を頭に呼び起こし、北翼棟を走りぬけ、北側の出入口へ向かった。追手の足音が迫ってくる。
出入口付近にフレッドの姿を見つけた。
「フレッド!」
僕の声に振り返ったフレッドは、僕に引かれて走る女性に気づいて口をあんぐり開けた。
何かを言おうとして言葉にならず、口をパクパクさせている。
「追手を引き止めてくれ!」
僕は叫んだ。呆気にとられていたフレッドはわけのわからぬ様子だったが、斧を持って追いかけてくる男達に気づくと
「わ、わかった」
と言って、執行人の腹に体ごとタックルした。
「恩にきるよ!」
僕は走りながら、フレッドに言った。今日ほど彼に感謝したことはない。
そこへ出入口にいた警備員たちが押さえ込みにかかり、その隙に僕達は美術館を抜け出した。
posted by ひつじ at 23:08| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月13日

「Across The Thames 〜テムズ川をこえて〜」


鳩が飛び立つ―
白い翼の聖霊(ホーリー・スピリット)が空へと舞い上がる。
巨大なライオンの彫像が見下ろすトラファルガー広場で、僕は聖なる鳥が飛んでゆくのを眺めていた。彼方に見えるビッグ・ベンのほうへ、その先の空へと。
鳩の姿が見えなくなってしまうと、僕は振り返って歩き出した。
広場の北側に八本の柱とギリシア風破風を備え、威風堂々と佇む美術館の石段を登ってゆく。
ティツイアーノかラファエロかプッサンか・・・、それとも、母国の画家レノルズかゲインズバラかターナーか。それら珠玉の作品を無視して、僕が向かったのは東翼棟にある一枚の絵。

3年前、パブリックスクールに入学したての13歳の僕は、学校の課外授業でここへ来ていた。ウィンザーからバスで1時間、ロンドンへの道中は、寄宿生活を始めた僕にとって、ちょっとした小旅行だった。
「気に入った絵を一枚選んで感想文を書いて提出すること。」
美術館に入ると、先生が自慢の口ひげを得意そうにちょっと触ってそう言った。
「二時間後に北翼棟31室にて集合だ。なお、館内からは絶対に出ないこと。では解散」
解散といわれても、黒燕尾に白タイの制服はどこへ行っても目立つ。それがこの学校の誇りであり一種のステイタスだが、僕には窮屈だった。
「美術館を抜け出せないかな」
隣でフレッドが悪巧みをもちかけた。
「先生にバレたらどうするんだよ」
僕は小声で囁いた。
「平気、平気。バレやしないさ。チャチャッと感想文書いてしまえば、あとは自由行動だ。館内にいようがいまいが、2時間後に集合場所に行けば大丈夫さ」
フレッドは、手にしていた館内案内図を調べながら言った。
「お、あった、あった。正面入り口とは反対側にもう一つ出入口が。ここからなら見つかりにくそうだ」
アルフレッドは北側の出入口を指差した。
「うん・・・」
フレッドの悪巧みは、危険だが麻薬のように魅惑的だった。

「さ、早く面倒なことは済ましちゃおうぜ」
フレッドは絵を探し始めた。解散した西翼棟は、1500年代の絵画が集められている。
僕より先に歩き出したフレッドが一枚の絵の前で立ち止まった。
「俺はこの絵にした!」
フレッドは絵から目を離さずに言った。
そんなに気に入った絵を見つけたのか。絵なんて、これっぽっちも興味のないはずのフレッドなのに。
フレッドに追いつき絵を見上げると、露わな裸身をさらけ出したヴィーナスが、キューピッドに胸を愛撫されながら接吻されている。僕は狼狽した。
「何、赤くなってるんだよ、エド」
フレッドが隣でニヤニヤ笑っている。フレッドに見られていると思うと、よけいに血が上ってくる。慌てて絵から目をそらした。
「この絵に決まりだ。最高傑作じゃないか。ブロンツィーノ様々だな。俺も、将来、画家になろうかな」
フレッドはニヤニヤしながら、絵をしげしげ眺めている。思春期の入り口にいる僕らにとって、その絵は禁断の果実だ。大人の世界の甘美な誘惑に満ちている。
「好きにしろ。僕は他の絵を探す」
「あ、おい、エド」
僕は、フレッドを置いて歩き出した。立ち去る前に、フレッドに気づかれないよう、目の端でもう一度絵を捉えてから。成熟した女神の肉体が、眩しく僕の心を乱した。あのキューピッドがちょっとうらやましかった。
心の奥底に芽生えた憧れと動揺を抑えるべく、うろうろと展示室を彷徨った。今年できたばかりのセインズベリー翼棟には1250〜1500年までの絵画が飾られている。美術館で最も古い作品群だ。罪悪感を払いのけるかのように、僕は宗教画に見入った。
ラファエロのカタリナなんかいいじゃないか。キリスト教を説いて殉教した聖女。ブロンツィーノのヴィーナスとは正反対だ。こんな絵の感想文を書けば、先生うけもいいだろう。
そう思いながらも、胸をおさえるカタリナの手があのキューピッドの手に見え、カタリナの顔をむける先にキューピッドの顔が重なって見えてくる。恥ずかしさと罪悪感でひとりでに顔が赤くなってくる。くそ、フレッドのやつ。
僕はカタリナを諦め、セインズベリー翼を後にすると、再び西翼棟を突っ切り東翼棟に移動した。ブロンツィーノからは一刻も早く離れたかった。
東翼棟で僕は一枚の絵をみつけた。
雨の中、蒸気を上げながら、橋を猛スピードで走ってくる列車。
まるで邪心から走って逃れようとする今の僕のようだ。
そうだ、この絵にしよう。
僕の心はようやく落ち着きを取り戻し、ソファーに座って感想文を書き始めた。

「ふぅ・・・」
しばらくして感想文を書き終えると、ソファーでくつろいだ。
僕らの学校の燕尾の制服は目立つ。時折、同級生のグループが二、三人でやってきては絵の前で話をしていた。どの絵にするか決めかねているようだ。
感想文を提出してしまえば自由になれる。僕はソファーから立ち上がると、先生を探すことにした。その頃には、僕の頭からは、あの艶かしいヴィーナスの絵も、フレッドのこともすっかり消えていた。
人ごみの中に先生の後姿が見えた。
「先生!」
声をかけたが、先生は隣の生徒との会話に夢中で、僕の声に気づかなかった。
先生の姿を追って、次の一室に急いだ。ところが、部屋に足を踏み入れたとたん、僕は雷に打たれたように動けなくなった。脳天から足の先まで衝撃が走った。目にとびこんできたのは、雪のように白い天使だった。
天使。この世で見つけた天使。
posted by ひつじ at 23:28| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年05月03日

上野の森・バレエ・ホリディ 2018

2018.4.29
去年は参加しなかったバレエ・ホリディ。今年は、行ってきました。
マルシェやバレエ大学(講座)、ミニコンサートやワークショップなど盛りだくさん。
ホント、文化会館が、バレエの森と化していました。
4/30のバレエ大学の「あらためて知るクラシック・バレエの魅力と秘密」という講座に
興味があったのですが、30日は仕事なので諦め。他の講座は、時間が遅かったので、それも諦め。
私が参加したのは、「やさしいバレエ・ストレッチ」。
受講者は、おばさんばっかりかと思いきや、男性も数人いました。
私の横にきたおじさん(おじいさん?)、よく見ると、黒いバレエシューズ持参で
やる気満々。(厚手の靴下でO.Kと書いてあったのに)
バレエ教室に通っているのか、この日のために新調したのか。
見るからにバレエとは縁遠そうなのに、こういうおじさんがバレエをやる気になるって
なんだか微笑ましい。

講師は、森田雅順さんでした。
森田さん、ちょっとキツいストレッチをやると、みんなに「生きてる?」と聞いたり
なかなか面白い人でしたが、「次は、これやろうかな。あ、やっぱりやめた」とか
「右脚を・・・やっぱり左脚からにしようかな」とか、わりと気分でやる感じ?(^_^;)
「覚えて帰って毎日できる簡単ストレッチ」のうたい文句にしては、覚えられなかった(^_^;)
しかも、ダンサーにとっては簡単なんでしょうが、私には簡単でもなかった(^_^;)
できれば、次回は、覚えられる基本的なバレエストレッチのメニューをお願いしたい。
でも、久々にバレエ・エクササイズをやって、とても楽しかったです。

その後は、ダッシュで、大ホールのホワイエに行って、ランウェイでやったコスチューム・ファッションショーを見ました。
チャコットやフェアリーやいくつかのメーカーのコスチュームを子供から若手までの踊り手が踊りながら披露。
バレエは、衣装の美しさに憧れて入ることが多いですよね。
私もチュチュとトウシューズに一目ぼれして以来のバレエ・ファンですから。
残念ながら、習ったのがモダン・バレエだったので、チュチュは着られたけど、トウシューズは履くことができず。

それから、特設ステージで、金管五重奏で「眠り」とかの音楽を聴きました。
その後、マルシェのお店をぶらぶら見学。
前日に行った友人が言っていたバレエ占いやおみくじもありましたが、バレエをやっていないのに
やってもね。子供向けでしょうね。

その後、ランウェイでやった、木管五重奏の「ロミジュリ」や「くるみ」のトレパークの演奏をを聴きました。
ロミジュリのモンタギュー家とキャピュレット家のダンスの音楽は、重厚で好きです。

木管五重奏が終わったら、ダッシュで、特設ステージに戻り「ダンス&クリエーション」を見ました。
木村さんが司会をしていました。木村さんの声って、あんまり聞いたことがないけど、渋系で解説も上手くこなしていました。
今年入団したばかりのフレッシュなダンサーたちが踊りました。
木村さん振付の女性二人で踊るダンスでは、15歳と16歳の新人の子が踊ったそうですが、白というかシルバーっぽいの衣裳の子が上手いと思いました。
童顔だったので、15歳のほうかな?
「ドアが閉まります」という演目が、とってもユーモラスで面白かったです。
女子高生をやっているのが男性というのも面白かった。
それから、"Will you marry me?"も、メンデルスゾーンの結婚行進曲をジャズ風?にアレンジして面白かったし、Warm upのダンスも楽しく踊りながらウォームアップできそうで良かったです。
東バ、こういう創作物も上手いし面白いなと思いました。フェス・ガラなどで披露してみたらいいのに。

最後に、西洋美術館の地獄門の前でのコンサートを聴いて終わりにしましたが、これは、特設ステージでやった金管メンバーが、同じ曲を弾いていたので、できれば違った曲が聴きたかった。
でも、大好きな地獄門の前でのコンサートなんて初体験なので、楽しかったです。
ちょうど今読んでいる小説「ダンテの遺言」に地獄門のモチーフが出てくるし、その前に読んだ「インフェルノ」もダンテの神曲へのオマージュで、地獄門繋がり。
小学5年生のとき初めて見て、打ちのめされたロダンの地獄門。以来、上野へ来ると、地獄門詣でをしています。

お金があれば、「真夏の夜の夢」公演も見たかったのですが、今年は、バレエ・フェスが控えているので諦め。
でも、バレエづくしの楽しい一日でした。

余談ですが、帰ろうとしたら、上野動物園から帰る子供たちが、何人もシャンシャンのぬいぐるみを抱いていました。ぬいぐるみだけど、可愛かった〜欲し〜い!

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2018年03月22日

高尾山・クラフト体験教室

2020年、東京オリンピックを目指してか、外国人観光客を呼び込もうと、
都心から行ける山・高尾山の環境が整備されました。
駅が新しくなり、ツーリスト向けのインフォーメーションもでき、
さらに高尾山のことがわかる599ミュージアムというところもできました。
確かに、ここ数年、外国人旅行者も見かけるようになりました。
インフォーメーションができた頃、面白半分で入ったら、ドイツ人の女性が
都心のホテルまでの帰り方を聞いていたので、スタッフと一緒に教えました。
また友人と高尾山に登って、帰り際、三人組の白人のおばさま方に写真を
撮ってと頼まれ、どこから来たのか尋ねると、オーストラリアからでした。
写真を撮ってあげると、帰りのケーブルカーにはどう行けばいいのか
尋ねられました。
そんなこんなで、一応「外国人おもてなし語学ボランティア」として
ほんのちょっぴりは役にたったのかなぁと思います。

ところで、599ミュージアムの隣に、「クラフト体験室」というところが
あり、木の枝や木の実を使って、自由に工作ができるようになっています。
一人、一点製作できます。
しかも、無料!(←タダに弱いワタクシ(^_^;)
工作しながら、木の実の名前が覚えられ、「この木にはこんな実がなるんだな〜」
と勉強にもなります。
子供だけでなく、大人も夢中になって遊べます。
初めて行ったときは、サンプルを参考にして、トトロの置物を作ってみました。

DSCN9034 (640x480).jpg

家人が作ったのは、「クルミのゆりかごで眠る親指姫」だそう。

DSCN9035 (640x480).jpg

あまりの楽しさに、また工作をしに行ってしまいました。
二度目に作ったのは、友人にあげるために作った、トトロの家。

DSCN9137 (640x480).jpg

家人が作ったのは、卵を見守る鳥のお父さんとお母さん。

DSCN9142 (480x640).jpg

この体験教室は、599ミュージアムの脇にひっそりと建っているので、思わず見過ごしてしまいそうですが、
高尾山に行かれた方は、是非立ち寄って、自然のものに触れながら、自分だけの森の仲間を
作ってみてはいかがでしょう。


posted by ひつじ at 18:05| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月24日

ピョンチャン・オリンピック〜女子フィギュアスケート〜 ピョンチャン・オリンピック〜女子フィギュアスケート〜 ピョンチャン・オリンピック〜女子フィギュアスケート〜


男子が日本のワンツーフィニッシュなら、女子はロシアのワンツーフィニッシュ。
フィギュア団体を見たとき、「これはメドヴェージェワが金でしょ」と思いましたが、さらにすごい選手が出てきました。さすがロシア、選手層が厚い。

●ザギトワ(1位)
ショートプログラムは見損ねてしまい、スワンの衣裳だったと知って、後からY〇u tubeで動画を見ました。スカートのかわりに短いチュチュがついていて、とても可愛い。まぁ、バレエヲタには、たまりませんね。15歳らしい愛らしさと15歳とは思えないテクニックです。
フリーは、ドン・キホーテでこれまたバレエ作品から。そして、衣装も赤いチュチュ付き。彼女は完全にバレエをやっていますね。
フィギュアを見ていると、背中や腕、手先の動きから、その選手がバレエもやっているかどうかが、なんとなくわかります。
「ドン・キ」の振付も、両足を開いてプリエするキトリのポーズやバジルにリフトされて見栄を切るときのポーズに似た動きで、バレエからの振付もあるのかな〜。
7回のジャンプ全てを後半にもってきて、それが成功したのも勝因でしょう。

●メドヴェージェワ(2位)
フリーは、「アンナ・カレーニナ」で、ワイン色のシックな衣裳。アンナ・カレーニナもバレエになっているので、ついバレエのほうを連想してしまいました。
ジャンプの難易度ではなく、表現力はメドヴェージェワのほうが勝っていたと思います。
ラストの、列車の音で、メドヴェージェワが顔の横に手をやるポーズ、アンナの死の直前を連想させました。彼女の演技にはドラマがありました。
どうせなら、二人とも金にしちゃえば良かったのにね。(そうしたら、繰り上げで宮原さんが銅になれたかも(^_^;)

●オズモンド(3位)
大柄な彼女の大柄な演技に、ブラックスワンは似合っていました。オディールの毒々しさがよく出ていたし、舞台映えがしました。
個人的には、アメリカン・ビーフな滑りより刺身定食な滑り(どんな例え?)のほうが、好みでしたが。

●宮原 知子(4位)
大きなミスもなくほぼパーフェクト。他を圧倒するような動きではなく、日本人らしい繊細な演技でした。この方は本当に努力の人なんだなぁと思います。完成度の高い滑りになってきていて、順位は関係なく、世界に誇れる滑りだったと思います。

●コストナー(5位)
何度もオリンピックに出場し、31歳でもまだ現役。
インタビューで「どうして現役を辞めないのか?」と聞かれると「スケートが好きだから」と答えたそう。シンプルだけど、とても好感のもてる答えです。
メダルを取ることより滑ること、皆に良い演技を見せることを大切にしていて、スケーターとしての本質を見せてくれます。ベテランらしい表現力、テクニックの安定感も増してきています。ルックスも若い頃と変わらず美しい。
日本好きだそうで、それも嬉しい。
フリーでは、牛柄みたいな衣装だな〜と思っていたら、「牧神の午後」でした。
壁画のような手の動きが、ニジンスキーの牧神を連想させました。
メダル争いとは関係ない、彼女だけの滑りをこれからも見せてもらいたいものです。

●坂本 花織さん(6位)
若いパワー溢れる滑りでした。後半でもエネルギーが持続するところが、昔の伊藤みどりさんを彷彿とさせました。これからもっと表現力もつけていくといいなと思います。
実は、この坂本選手、私の友人の親戚だそう。友人から、メールでそのことを聞いた翌日、四大陸選手権で優勝したのでビックリ。「ピョンチャンにも出るので応援して」と言われ、
「へ〜、オリンピックに出るんだ」とまたビックリ。

今回は、全体的に大きなミスも少なく、クオリティーの高い試合だったと思います。
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2018年02月20日

男子フィギュア金銀!ピョンチャンオリンピック

羽生選手が二連覇で金メダル、宇野選手が銀メダルとワンツーフィニッシュに沸いたピョンチャン・オリンピック。怪我からわずか三か月、ショートで見事な復活を果たした羽生選手。でも、足はまだ完全に治ってはいないはず。ショートで頑張りすぎて、フリーは大丈夫かと心配していました。
そんな心配は杞憂に終わり、理想的なワンツーフィニッシュでした。
ちょうど羽生選手、宇野選手の演技の時間は、通っている工房にいる時間。
先生に無理を言って、パソコンからピョンチャン・オリンピックを観させてもらいました。
日本の金銀メダル決定の瞬間は、皆で大盛り上がり。
メダルはともかく、怪我から復帰できたこと、良い滑りを見せてくれたことに感謝です。

荒川静香さんの金メダル以降、フィギュア熱が日本に広まりましたが、私がフィギュアスケートに興味をひかれたのは、(前のブログにも書いたけど)ン〜十年も昔、伊藤みどり選手が、まだ子供で、年齢的に大会に出場できないくらいの頃。
大会に出場できなかったけれど、大会の後に余興(?)で、伊藤みどりちゃんが滑り、アナウンサーが「将来を期待できる選手になるでしょう」と言っていた時代です。
日本でまだフィギュアスケートがマイナーなスポーツだった頃、TVにかじりついてNHK杯を見ていたものでした。
その頃の貴重な新聞の切り抜きをいまだに取ってあります。
今回は、それを載せることに。
さて、この選手はいったい誰でしょう?
DSCN9048 (480x640).jpg

このポーズはよく知られているスピンのポーズですね。
何といいましたっけ?
そうです、ビールマン・スピンです。
では、何故ビールマン・スピンというのでしょうか?
ビール好きの男性(マン)がやったスピンだから?
ではありません(^_^;)
このスピンを生み出したのは、スイスのデニス・ビールマンという女子スケーターでした。
1980年のNHK杯で見せた彼女のこのスピンは、スケート界に衝撃を与えました。
そして、彼女の名を取ってビールマン・スピンと呼ばれるようになりました。
以来、多くのスケーターがこのスピンを演技に取り入れています。
この1980年のNHK杯の記事の切り抜きでは、女子はビールマンが堂々1位、カタリーナ・ビットが2位だったと書いてあります。ちなみに男子は、ロバート・ワーゲンホッファーが1位、シュラムが2位、日本からは五十嵐文男選手が出場していました。
古〜い時代のフィギュア・スケートのお話でした。


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2018年02月13日

バレエ末席物語〜「ニジンスキー」リアブコ〜

「ニジンスキー」
2018.2.10
ニジンスキー・・アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・・・エレーヌ・ブシェ
ほか ハンブルク・バレエ団

狂気の天才ダンサー、ヴァツラフ・ニジンスキーの人生をノイマイヤーがバレエ化した作品。
数年前に、「バレエ・リュス」展を見に行ったこともあり、バレエも見てみようと思いました。
この作品は初見だし、きちんとしたストーリーがあるのではなく、ニジンスキーの心の内、内面の狂気を表しているので、文章に書くのも難しいし、踊りの順番もはっきりとは覚えていません。なので、感想もざっくりと。
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2018年02月09日

バレエ末席物語〜「椿姫」コジョカル&トルーシュ〜

「椿姫」ハンブルク・バレエ団
2018年2月4日

マルグリット・・・アリーナ・コジョカル
アルマン・・・アレクサンドル・トルーシュ
ほか ハンブルク・バレエ団

コジョカルとブシェの椿姫、どちらにしようか迷いに迷った末、ハンブルク・ダンサーであり、抒情的な踊りが素晴らしいブシェ公演を選びました。年齢的にも、ブシェの全幕は次回も見られるとは限らないので。それに、コジョカルは出産明けで体調がどれだけ戻っているかも心配でした。
そうして選んだにも関わらず、ノイマイヤーの意向で、ブシェ降板、代役コジョカルという結果に。喜んでいいのやら悲しんでいいのやら・・・(^_^;)
ブシェは見られなかったけど、きっと本調子ではなかったのだろうし、コジョカルが見られて良かったです。

【プロロ−グ】
マルグリット・ゴーティエのアパルトマン。オークションが開かれている。マルグリットの侍女であるナニーヌが悲しげに、マルグリットの帽子を拾い、マルグリットの肖像画を眺める。肖像画は、コジョカルにクリソツ。
マルグリットの帽子もドレスも、かつての思い出の品。
次々と家具や絨毯などが運び去られ、最後に飛び込んできたアルマンは、マルグリットの紫色のドレスを持ち去ろうとする女性からドレスを奪い取る。そのドレスは、アルマンが初めてマルグリットと出会ったときに着ていたもの。父に抱き着き、嘆くアルマン。
振り返ると、景色は、劇場へ変わっている。

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2018年01月07日

クラシック三昧年末年始2017-2018

あけましておめでとうございます。
久々の「クラシック三昧年末年始」のコーナーです。
毎年見てはいるんですが、blogにまとめる時間がないのです。

●「第九」
毎年恒例の第九。これを歌わないと年が越せませんね。
指揮は、クリストフ・エッシェンバッハ。
エッシャンバッハさんは、ヴォルデモートみたいなスキンヘッドでやや強面ですが(失礼(^_^;)、生まれたとき、出産でお母さんを亡くし、戦争でお父さんを亡くし、孤児となって苦労した方。
今年は、ソリストは全員日本人でした。
第4楽章の合唱を歌い終え、年越しに向けて一年の禊を。

【クラシック・ハイライト】
●オペラ「蝶々夫人」
蝶々夫人役の中嶋彰子さん、とても良い声で泣かせる。
ピンカートンはもう帰ってはこないとわかりつつ、ピンカートンの軍服を肩に纏いながら、ピンカートンが帰ってくると信じたい切ない気持ちを歌い上げていました。
最後は軍服を脱いで、後ろ姿で肩を震わせて泣く姿に胸締め付けられます。
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2017年11月21日

バレエ末席物語〜「クレオパトラ」〜

「クレオパトラ」
2017.10.20

クレオパトラ・・・中村 祥子
プトレマイオス・・・山本 雅也
カエサル・・・スチュアート・キャシディ
アントニウス・・・宮尾 俊太郎
オクタヴィアヌス・・・遅沢 佑介
ポンペイウス・・・ニコライ・ヴィユウジャーニン
ブルータス・・・伊坂 文月
オクタヴィア・・・矢内 千夏
案内人・・・酒匂 麗

アップが非常に遅くなりましたが、Kバの世界初演「クレオパトラ」を観てきました。
ちょっとづつ書いていたこともあるし、10月末からひどい風邪をひき、2週間近く治らず、こんなに遅くなりました。←遅すぎ
Kバは、なんと初見。
熊川さんのバレエは、20年以上前に、まだKバができていない頃に、見たことがあります。
ロイヤルから帰国し、見事な跳躍で、女性たちを魅了し、一大バレエ旋風を巻き起こした熊川さん。にわかバレエ・ファンの女性たちが黄色い声をあげ、まるでアイドルのよう。
そんな熊川さんファンを冷ややかな目で見ていた私ですが、熊川さん熱に浮かされた知人にチケットをプレゼントされ、無理やり彼の舞台に連れて行かれたのでした。
舞台には、スクリーンが用意され、真っ赤なスポーツカーでロンドンを疾走する熊川さんが映し出され、それを見てキャーキャー騒ぐ女性たちに、ゲンナリしたものでした。
「30歳過ぎて、跳べなくなっても踊るのは自己満足」と豪語していた熊川さん。
バレエは跳ぶだけのもの?
マイヤ・プリセツカヤとどんな気持ちで共演したのかと思っていました。
そんな生意気っぷりがよく表れた「オレ様熊様」の踊りに、感心すれども感動はせず。
自分から、彼の舞台を観ようとは思いませんでした。
しかし、20年以上たち、彼も白髪の目立つ中年になり、かつての熊川節も多少は変わったのかもと思います。
こちらの考え方も多少は変わり、イギリスという異国で、自己主張の強い白人たちの中でトップになるには、それに張り合えるだけの強さがなければ成しえないこととも思うようになりました。
Kバを創立してからの、彼の頑張りっぷりは、なかなか感心もしていました。
ただ、Kバはチケット代が高いので行けなかったのです。
そんな熊川さんが、全く新しくバレエを創作したと聞き、しかも、中村祥子さんのあのクレオパトラの写真を見てしまうと、これは興味をそそられます。
クレオパトラ.jpg
しかも、曲は、カール・ニールセンというから、目のつけどころが素晴らしいと思いました。
ニールセンは日本ではあまり知られていませんが、私は、ニールセンの交響曲4番「不滅」が好きでCDをたまに聴きますし、彼の曲はバレエになりそうとも思っていたので、熊川さんの選曲は当たるだろうとも思いました。熊川さんが使ったのは、ニールセンの「アラジン」という曲から。
言い訳が長くなりましたが、そんな経緯で「クレオパトラ」を観に行くことになりました。
クレオパトラの有名な逸話などは知っていましたが、バレエを観る前に、今一度きちんとクレオパトラの一生を知っておこうと、3冊ほど歴史の本で予習をしておきました。
本を読んで、改めて驚いたのは、クレオパトラはエジプト人ではなかったんだ〜、プトレマイオス家はファラオの血筋ではなかったんだ〜、クレオパトラという名前はギリシャ語だったんだ〜などなど、「へ〜」と目から鱗。やっぱり読んでおいて良かった。

いよいよ本題ですが、ブログを書き終えるまでに時間がかかりすぎ、バレエの後半の記憶は曖昧なので間違っていたら、すみません(汗)。

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2017年10月12日

美術展紀行〜「怖い絵展」〜

「怖い絵展」
2017.10.7〜12.17/上野の森美術館

今回は、珍しく開催されてすぐに行ってきました。
というのも、買った格安チケットの有効期限が、10/7〜11/5までと、美術展自体の開催期間より一か月以上も短く、行ける日に行っておかないとならなかったのです。
祝日は混んでいるかと一瞬思いましたが、他に行ける日もなく、国立西洋美術館でも都立美術館でもないし、どこかの番組で取り上げられる前だし、きっとそんなに人は来ないだろうとふんで、体育の日に行ってきました。
不忍の池口から改札を出て、西郷どんの銅像横を「来年の大河の主役だわねぇ〜」と思いながら通り過ぎ、美術館に近づくと、プラカードを掲げた係員が「ただ今、ここから50分待ちです!」と声を張り上げているではありませんか!
見れば、美術館の前は長蛇の列。ガ〜ン(>_<)
読みを誤った・・・しかし、今更ひきかえせない。
入場までに50分待ちって・・・ディズニーランドのアトラクションぢゃあるまいし(泣)。
ホント、ディズニーのアトラクション待ちよろしく、美術展には珍しい若者、親子連れが並んでいて、「イタリア絵画うんちゃら」とか「印象派なんちゃら」とかの美術展とは客層が違う感じ。
確かに「怖い絵展」なんていうと、美術ヲタじゃなくても興味をそそられそうだし、これだけの集客力があるなら企画としては成功しているんだなと改めて思いました。
中野京子さんの「怖い絵」という本も何年も前に出版されていて、絵画をちょっと違った角度から眺める面白さがあります。
見くびっていたワタクシ、トホホ。

このブログを長年お読みいただいている方なら、私がこの美術展に行く唯一の理由はもうおわかりでしょう。
当ブログ、長年のアクセス数ナンバーワンの記事が「ジェーン・グレイの処刑」。
その絵が、イギリス、ナショナル・ギャラリーから初来日。
ジェーンに再会できるチャンス、これはもう行くしかありませんね。

前置きが長くなりすぎましたが、いよいよ本題。
中へ入っても、人・人・人で絵がほとんど見えない。見るのに苦労しました。
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2017年10月01日

バレエ末席物語〜「トランス=シベリア芸術祭in Japan」〜

「トランス=シベリア芸術祭in Japan」
2017.9.29

今年のザハロワ公演第三弾です。
「amore」にも、とても興味があったのですが、1日しかないレーピンとの共演にしてみました。
レーピンの使っているバイオリンは、ストラディバリウスだそうですが、昔聞いたストラディバリのコンサートの音色とはちょっと違う気もしました。個々の楽器にも音色の差はあるだろうし、弾き手によっても音色は変わってくるのでしょう。
レーピンは、わりと技巧的な演奏が好みのようで、選曲も、そういう曲を選んでいるようでした。ピッチカート多用?(^_^;)
一つのバイオリンで、一つ以上の音が聴こえるようなテクも披露していました。

Blogでは、バレエ中心に書いていきます。
〇「ライモンダ」よりグラン・アダージョ
スヴェトラーナ・ザハロワ/デニス・ロヂキン

光物多用のライモンダのキラキラ衣裳がザハロワを、より輝かせていました。
冒頭から目を奪われます。女王の風格で、堂々としていました。
とても美しい二人でした。
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posted by ひつじ at 16:32| Comment(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月13日

ちょこっとシネマ〜「静かなる情熱・エミリ・ディキンスン」〜

2017.7.29〜9.15
岩波ホール

アップが遅くなりましたが、8月初旬に恩師に誘われ、見に行ってきました。
以前のブログにも書いたように、エミリ役の女優シンシア・ニクソンは、やはりあまり私のイメージのエミリではありませんでした。でも、この女優さんはエミリの詩の熱心な愛読者だそうで、役への思い入れも一入だったのかもしれません。
アマーストの実際のディキンソン家のお屋敷で撮影され、庭も美しく、忠実に描こうとしているのがわかります。
マウントホリヨーク女学院で、受洗を決めた者とこれから洗礼を受けるために学ぶ者とに分かれますが、エミリはそのどちらにも入るのも拒否します。先生からは、神の国に入ることを拒否したと叱責されますが、エミリは自分の意志を曲げません。
マウントホリヨーク女学院でのエピソードは事実に基づいて描かれていますが、この描き方だと、反抗的な部分ばかりが強調されてしまっている気がします。
エミリが頑なに受洗を拒否したのは、「反抗的だったから」ではありません。彼女は、誰よりも真摯に神と神の国を求めていました。そして、それが見つけられない苦悩の中で生きたのです。
続き
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2017年08月15日

A Rose for Emily〜The Soul selects her own Society〜

The Soul selects her own Society
Then-shuts the Door
To her divine Majority
Present no more

Unmoved-she notes the Chariots-pausing
At her low Gate
Unmoved-an Emperor be kneeling
Upon her Mat

I’ve known her-from an ample nation
Choose One
Then –close the Valves of her attention
Like Stone

(Emily Dickenson No.303)


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2017年08月11日

A Rose for Emily〜I was the slightest in the House〜

I was the slightest in the House
I took the smallest Room
At night, my little Lamp, and Book
And one Geranium

So stationed I could catch the Mint
That never ceased to fall
And just my Basket
Let me think- I’m sure
That this was all

I never spoke –unless addressed
And then,’twas brief and low
I could not bear to live-aloud
The Racket shamed me so

And if it had not been so far
And any one I knew
Were going-I had often thought
How noteless-I could die
 Emily Dickenson(No. 486)
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2017年07月30日

映画「静かなる情熱 エミリー・ディキンソン」

私が、ブログで取り上げているエミリー・ディキンソンの映画が上映されています。
ディキンソンについて知りたい方は、是非。
「静かなる情熱 エミリー・ディキンソン」
2017年7月29日〜9月15日
岩波ホール(神保町)
私も行きたいのですが、これにお誘いくださった方が、ご病気のご家族の看病があるので、行けるかどうかわかりません。
岩波ホールのHPを観る限り、エミリー役の女優は、私の中のエミリーのイメージとはちょっと違うのですけど、どんな感じに仕上がっているのかな〜と思います。
行けたら行きたい!
posted by ひつじ at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月10日

バレエ末席物語〜「白鳥の湖」ザハロワ&ロヂキン〜

「白鳥の湖」
2017年6月8日/東京文化会館

オデット/オディール・・・スヴェトラーナ・ザハロワ
ジークフリート王子・・・デニス・ロヂキン
ロットバルト・・・ミハイル・クリュチコフ
道化・・・アレクサンドル・スモリャニノフ

この日も友人と夕食を食べてから文化会館に向かうと、楽屋口に人が集まっていました。
でも、先日のようなSPや黒塗りの車がいるわけではなく、普通の入り待ちの光景。
背の高い白人ダンサーが爽やかに写真撮影に応じています。
私が撮ったのは失敗したけれど、友人はなんとかハンサム笑顔をスマホ撮り成功。
マチネで踊ったオフシャレンコでした。

以下、ざっくりと感想を。

続き
posted by ひつじ at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする